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金木犀の許嫁
第五話 引っ越しの時その二

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「不安だったから」
「それでなの」
「よかったってね」
 真田家の人が家に入ってくれてというのだ。
「思ってるよ」
「そうなのね」
「本当にね」
「男の子一人っていうのは」
「不安だったんだ」
「別に不安になることないでしょ」 
 特にとだ、夜空は佐京に言葉を返した。二人は校舎裏で向かい合って立ってそのうえで話している。
「それは」
「そうかな」
「ええ、別にね」
「いや、俺はね」
 佐京は自分はと答えた。
「そうしたところがね」
「気になるの」
「どうもね」
「別に意地悪とかしないけど」
「それでも
「気になるの」
「そう」
 その通りだというのだ。
「俺にしては」
「そうだったのね」
「夜空さんはどう」
「いや、私は別に」
 これといってとだ、夜空はその佐京に答えた。
「別にね」
「気にならないんだ」
「そんなこと気にしても」
 そうしてもというのだ。
「別にね」
「何でもないんだ」
「ええ、そういえばうちは」
 実家のことを思い出して話した。
「お家で男の人ってお父さんだけよ」
「そうだったんだ」
「やがて佐京君のお義父さんになるわね」
「俺達が結婚したら」
「その時はね」
「おじさんもだったんだ」
「ええ、それで別にお父さん困った感じしてなかったし」 
 夜空は家の中で父が普通に父親として夫として暮らしていることから言った、それで特にどうということはない感じの彼を。
「それじゃあね」
「俺もいいんだ」
「そうじゃないかしら」
「男の人は一人でも」
「別にね」
「そうだったんだ」
「けれど真田家の人が来ることは」 
 このことをあらためて言った。
「もう」
「そう、決まったから」
「そうなのね」
「五人で暮らすことになる」
 夜空に話した。
「それでその人が一番年長」
「それで悪い人じゃないのね」
「特に」
 そうだというのだ。
「だから安心していい」
「それじゃあね」
「うん、真田家の人は代々いい人」
「幸村公みたいな」
「本当に」
「それは何よりね。ただ」
 ここで夜空はこんなことを言った。
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