第三幕その五
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「そんな悪く言うこともないし」
「思うこともないよ」
「先生は学問が凄くて」
「しかも公平で優しい紳士だし」
「問題ないよ」
「先生程いい人はいないよ」
王子も言います。
「本当にね」
「そうだよね」
「先生凄くいい人でね」
「紳士でね」
「物凄く幸せになれるよ」
「これからもね」
皆で先生にお話します。
「今も幸せだけれど」
「これからもっとね」
「幸せになれるよ」
「本当にね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「もっと周りを見ようね」
「そうしようね」
「今度は恋愛かもね」
「そちらになるかもね」
「ははは、恋愛は僕には無縁だよ」
こちらのことは全く自覚のない先生でした。
「得意不得意以前にね」
「もてる要素がない」
「そうだっていうんだね」
「先生は」
「うん、だからね」
それ故にというのです。
「僕はそちらは求めないよ」
「求めたらいいじゃない」
王子は呆れたお顔でこう突っ込みを入れました。
「周り見てね」
「王子もそう言うね」
「というか先生お見合いすら考えないね」
「来日してから暫く勧められていたよ」
「そうだったんだね」
「けれど僕が結婚するとか」
「想像出来なかったからだね」
「お断りしていて。そうそうどういう訳か」
先生はふと気付いて言いました。
「日笠さんとお知り合いになったら」
「それからだね」
「どうもね」
考えつつ言うのでした。
「そうしたお話が来なくなったね」
「それはどうしてかな」
「どうしてだろうね」
何もかもがわかっていないことが誰もが物凄くわかる返答でした。
「不思議だよ」
「かなりあからさまだと思うけれど」
「そうなのかな」
「まあね、ただ舞鶴に行ったなら」
王子は呆れつつ言いました。
「トミーに他の親しい人にサラさんに」
「お土産を買わないとね」
「そしてね」
「そして?」
「日笠さんには何があっても」
それこそというのです。
「買わないとね」
「何処かに行ったらいつも言われるね」
「僕も言うしね」
「トミーも皆もね」
「言わないでいられないからだよ」
それでと言う王子でした。
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