第二部 1978年
ソ連編
修羅の道 全世界を恫喝するソ連の核戦力
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、君は休みたまえ」
「わかりました。同志議長。小官は退席させていただきます」
参謀総長は、議長に一礼をした後、あきらめた様子で、ドアに向かった。
ドアノブに手をかけたかと思うと、静かに部屋を去っていった。
信任していた参謀総長まで……、自分を裏切るのか。
チェルネンコ議長は、思い知らされた。
ソ連国内にも、いや政治局という己の足元にも、多数敵が存在することを。
執務室に取り残されたチェルネンコは、思い悩んでいた。
『わが最強の第43戦術機甲師団ヴォールク連隊が、たった一機の戦術機に敗れ去った。
この事実が、冷戦という構造に与える影響は計り知れない……』
彼は、思考の合間に眺望に目をやり、黯然銷魂に沈んでいった。
ゼオライマーの存在は、この世界に多くの利益をもたらした。
100万を超える精兵をもってしても攻略できなかったハイヴの撃滅。
しかもほぼ無傷__。議長の心は揺れた。
どうせ黄色猿の作ったマシンだし、ろくな実績もないと、高を括っていたのだ。
『ゼオライマーは史上最強のマシンとして、月面攻略に向かうであろう。
木原がどう動き、日本が我らにどう立ち向かうか、予想はつかないが……』
ソ連の自尊心は大いに傷つけられたが、ここはひとまず東欧から撤退しよう。
あまり東欧問題に時間をかけ、全世界から孤立する前に。
ブレジネフの直弟子であるチェルネンコにとっては、複雑な思いである。
『チェコ事件』――別名、『プラハの春』。1968年8月20日深夜にソ連軍がチェコスロバキアに軍事侵攻した事件――で、ブレジネフは、社会主義国間の引き締めを図った。
このソ連の一大原則、主権制限論――元は、1968年9月26日付のソ連共産党機関紙『プラウダ』に載った「社会主義諸国の主権と国際的義務について」による――を捨て去ればどうなるか。
第二、第三の反乱が起きるのは、目に見えている。
プラハの春事件を受けて、1968年11月12日に開催されたポーランド統一労働者党第5回党大会に出席したブレジネフは、『個々の社会主義国は、社会主義共同体全体に対し責任を負っている』という論評を発表したほどであった。
かつてないほどの怒りで、チェルネンコの身は震えた。
木原マサキと、そのマシン、天のゼオライマー。
たった一人の男に、自分が身を置いている世界を否定され、嘲笑された。
今まで築きあげた社会主義体制、友好協力相互援助条約機構、経済相互援助会議……。
このまま黙って見過ごせば、惨めな敗北に変わることは、彼には分っていた。
それでも、彼はあきらめなかった。
『ここで我らが怯めば、東ドイツの追従者を生み、ソ連の権威が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ