第二章
[8]前話
「食べてね」
「うん、じゃあ後でね」
「何時でもいいからね」
「今日はちょっとチョコ食べたからね」
「甘いお菓子だから食べ過ぎるとよくないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「今日はね」
「食べないわね」
「また今度ウイスキーかブランデーを飲みながら」
そうしつつというのだ。
「いただくよ」
「そうするわね」
「うん、明日にでもね」
「そうしてね」
「今日は貰うだけで。あとホワイトデーは」
貰ったからにはとだ、妻に言った。
「何がいいかな」
「ワインのボトルね」
妻はにこりと笑って答えた。
「ランブルスコね」
「イタリアのワインだね」
「あれをお願いね、赤ね」
「じゃあ買っておくね」
「宜しくね」
「それならね、ただ何かね」
ここで前川は自分でネクタイを緩めながら妻に言った。
「ずっと貰ってお礼してだと」
「お互い慣れてくるわね」
「会社でもね。完全な義理でね」
それでというのだ。
「事務的だよ。チョコレートは美味しいけれど」
「私はこれでも結構奮発してるわよ」
妻は夫にこう返した。
「だからよ」
「いいチョコレートだね」
「毎年ね。だから美味しいでしょ」
「うん。ただ真美がいたら」
大学生で今は東京で一人暮らしをしている母親そっくりの彼女のことを思い出した。そのうえで妻に話した。
「ちょっとしたチョコレートで見返りはね」
「娘だからね」
「毎年そうだったね。けれどそれでも貰ったら嬉しいし」
義理でもとだ、前川は妻に話した。
「美味しい思いをするしね」
「いいっていうのね」
「貰えたらそれだけでいいよ。じゃあ今からね」
「晩ご飯ね」
「今日は何かな」
「鱈のお鍋よ。バレンタインっぽくないけれどいいわね」
「チョコレート貰ったからバレンタインだよ」
こう妻に返した、そうしてだった。
妻と二人で夕食を食べた、彼女から貰ったチョコレートは次の日ウイスキーの肴になった。そのチョコレートも美味しいと思った前川だった。そして一ヶ月後会社にはマシュマロの袋を持って行って妻にはワインのボトルを贈ったのだった。
義理チョコバレンタイン 完
2024・2・8
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