第一章
12.茨の道
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と仮面取る」
「え? はい」
仮面とフードが剥がされ、まだ少年の黒髪と素顔が露わになる。
少女は前に見たときとの差異があることを認めた。
「顔がちょっと締まってきたかな」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「信者で居続けたいというようなことは割と最初から言ってた気がするけど……。意志が固くなったのか、いや、もともと固かったけど頭が整理できてなかっただけで、それがここにきてだんだん整理できてきたという感じか」
白い少女は、手元の仮面をチラリと見て、続けた。
「わたしが今日キミに会って言いたかったのは、『教団の再建だけはやめたほうがいい』という忠告だった」
「……」
「キミだけなら、前にも言ったとおり、信者をやめてロンダルキアを去れば、生き延びられるから」
フォルは大きな黒い瞳を、じっと少女に向けることで答えた。
「やっぱり、やめるつもりはない、か」
「そうですね。自分がその器だとはまったく思いませんが、このまま頑張らせていただきます」
「きっと、大変だよ」
剥がした仮面を、少女がフォルの手に渡す。
「はい。それは、わかっているつもりです」
フォルが一礼してそれを受け取り、着け直した。
そして少女のほうは、顔を北に向けた。
気づけば、雪がやんでいる。
北の空、山際は雲が切れていた。
いつのまにか日も落ちてきていたのか、そこから見える空の青はやや濃い。
広がる白い峰々の間。ちょうど今、一つの光がキラリと輝き始めた。
「あそこでは、こちらの動きを見ているかもしれないよ」
「ロンダルキアを見張っていたという大灯台ですね? 今は機能していないのでは」
「人間がいたとしても、今は見ているだけで機能はしてないだろうね。でも、これからムーンブルク城復興が進んだらどうかな。わたしは連携が復活する気がする」
「ではその前に、もう監視は必要ないのでやめていただきたいということを、信者としてお願いしにいきます」
「教団再建は諦めます、とはならないんだ」
「はい。すみません」
「わたしは大灯台に行くのも反対だけど。まあ、その感じだと行ってしまうのかな」
「近いうちに行きます。教えてくださってありがとうございます」
「キミはいつでも、わたしの勧めと逆のことをしてる」
「ごめんなさい。せっかく気にかけてくださっているのに」
ミグアの視線がフォルの胸元に行く。まだネックレスがかかっていた。
しかしそこに、青がゆらめく宝石はない。
「……がんばれ」
本人にも聞こえないように、白い少女はマフラーの中でつぶやいた。
◇
フォルの元を辞したミグアが雪の上を祠に向かって歩いていると、
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