第97話 見えて見えないもの
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。勿論、ビュコック中将の功績は大きいが、作戦指揮を執ったのは君と情報参謀のバグダッシュ君だったと聞いておる」
情報将校の名前が世間に轟くのはあまりいいことではない。バグダッシュには悪いことをしたかもしれない。
「正直言えば、私はそれほどゴルフの腕は良い方ではない。まぁ老い先短いが、これから少しはトレーニングしてもいいかもしれないな」
これからも『よろしく』という挨拶か。周辺視野に入っているアイランズの顔には満面の笑みが浮かんでいる。
つまりアイランズが国防委員会で俺が補佐官職にある限り、ラジョエリナ氏を通じてサンタクルス・ライン社が関与してくれる。キャゼルヌからトリューニヒトの後援企業として恒星間輸送企業が付いていることは聞いていたが、そのラインが俺とラジョエリナ氏によってさらに強化される。つまりは出汁にされたわけだが、これも『仕事』なのだろう。
その上でラジョエリナ氏は実際に作戦指揮を執ったのが検察庁ではなく軍部であることを、自分達は知っていると伝えてきた。アイランズはあえてスルーしているが、対外的には検察庁が音頭を取りトリューニヒトがコーディネートしたというふうに取られている以上、卑下はしててもサンタクルス・ライン社の情報収集能力は通り一遍ではなく、トリューニヒトの口車にただ乗せられているわけではないぞ、といいたいのか。
他にもアイランズは俺に食料品大手、電気機器製造業、医薬品工業の重役を紹介していくが、ネグロポンティも含めてラジョエリナ氏の存在感は別格。誰も彼も俺に対して会話はしても、氏の方に注意が向いているのが丸わかりだ。
ハイネセンは一〇億人の人口を抱える一大消費地であり、潜在的な生産能力はあっても現時点では消費物資を、恒星間輸送に頼っているところが多い。一惑星が七〇億人を抱えていた時代を知る俺としては畸形にもほどが過ぎると思ったが、地球と全く同一条件の天然惑星は存在しないという自然的な制約と、過剰生産による値崩れと言った経済的な制約、そして星間国家というあまりにも巨大な版図を維持する為の繋がりの条件としての政治的な制約が、そうさせているのだろう。
そしてその血流を担っているのが恒星間輸送企業であり、その中で最大級のサンタクルス・ライン社を軽視することなど到底できない。以前から政界とは十分に癒着して来たであろうけど、彼らが支持するというだけでトリューニヒト派が増勢するというのは無理からぬことかもしれない。
「ボロディン中佐は全くの初心者だろうから六〇でいいだろう。それでチーム分けだが……」
「私は中佐と回らせてもらいたいが、いいかな?」
ネグロポンティの仕切りに、ラジョエリナ氏が小さく手を上げて口を挟んでくる。ネグロポンティとしては氏と『いろいろ』お話ししたいと思っていただろうが、
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