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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第97話 見えて見えないもの
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ざとらしく思い出すように俺は応える。

「ケリムとマーロヴィアとエル=ファシルとアスターテとドーリアで少々。司令部付でしたので、上官と運に恵まれたおかげです」

 たいした軍歴ではないですがそれなりに実戦は重ねておりますよ、をオブラート三重重ねで言ったつもりだったが、どうにもネグロポンティ氏には通じていないようで、その視線には侮蔑が隠しきれていない。アイランズから話を聞いているということは、少なくともトリューニヒトの意を酌んで俺がここにいることは分かっているはず。

 つまりは嫉妬。士官学校以来ずっと親の七光りだの校長の贔屓だの、散々浴びせられてきたからこの程度のことは気にはしていないが、今回スルーするとしても相手がなかなか問題だ。
 現時点でネグロポンティはトリューニヒト派の評議会議員の一人に過ぎないが、原作ではトリューニヒトの次に国防委員長になる男。操り人形ではあるにせよ、着実に国政内で勢力を伸ばしつつあるトリューニヒト派の中ではそれなりの立場にある。スピーカーであるとしても、雑音しか出せないような男ではない。それがこの程度の器量とは、アイランズと比較しても考えづらいのだが。

「しょ、紹介しよう、ボロディン中佐」

 微妙な空気を察したアイランズが、俺とネグロポンティの間に割って入り肩に手を廻しながらさりげなくネグロポンティと距離を取らせつつ、参加者に俺を紹介していく。ネグロポンティから喧嘩を売ってきたとはいえ、本来ならそういう気遣いをしなければならないのは俺の方だし、アイランズに配慮させたのでは仕事をしていないようなものだ。心の中で自虐しつつ、口には出さずアイランズに目配せすると、アイランズも何も言わず軽く二度俺の肩を叩く。

「私の兄のハワードだ。ビリーズ&アイランズ・マテリアルの専務をしている」
「よろしく、中佐」
「よろしく、アイランズ専務」
「はははっ。ハワードでいいですぞ。ウォルターと区別できんでしょう。私もそちらの方がやりやすい」

にっこりと笑いながら手を差し出すハワード氏は、目元に若干の皺があるのと髪の色が少し薄いだけでアイランズと瓜二つだが、実業家だけあって目が鋭い。明らかに商売人の目だ。
「ウチの弟が君に迷惑をかけてないかね。特に口にできないようなこととかで」
「兄さん、勘弁してくれよ」
 サームローイヨートの一件だけでなく、他にも恐らく色々とあるんだろうなと、ハワード氏の『困った奴め』と言った表情が物語っている。
「いえいえ。アイランズ先生には良くお引き立ていただいております」
 俺が握手をしながらそう応えると、ちょっと驚いた眼で俺を見て、次いでアイランズに心底意外だといわんばかりに
「随分と偉くなったもんだな、ウォルター。まるで本当に仕事しているみたいじゃないか」
「仕事してい
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