第二部 1978年
原作キャラクター編
岐路 ベアトリクスとアイリスディーナ 運命の分かれ道
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かお見知りおきを」
と、白いドレスの裾を持ち上げ、慇懃に膝折礼――17世紀以降、西欧で発達した婦人特有の挨拶。貴人や目上の人物に対して行われる――で、挨拶をして見せた。
いたく感激したカッツェは、思わず、
「おお、君が噂の、ヤウクの婚約者様か。随分かわいこちゃんだね」と、大声で言った。
その可憐なさまは、来賓の将校やその妻たちも感心させるほどであった。
遠くでマライと話しながら、紫煙を燻らせる彼女の婚約者、ヤウクも思わず、顔を向けた。
頬を赤く染める内気な少女の後ろから、父であるシュトラハヴィッツ将軍が来て、
「な、うちの娘は可愛いだろう。こんないい子は他には居まい」と広言した。
カッツェは、隣のユルゲンを揶揄いたくなったのか、
「まあ、ユルゲンの若妻よりもいいですね。純粋な所が」と言ってしまった。
「そうだろう。まさに天真爛漫とはこのことだよ。
同志カッツェ、君もそう思うかね。
いや、男兄弟だけだから分からぬと思っていたが、中々鋭いね」と満足げだった。
それまで、黙って飲んでいたユルゲンには、聞き捨てならなかった。
妻、ベアトリクスを汚されたような気がした彼は、
「カッツェ!確かにウルスラちゃんは可愛い。でも俺のアイリスの方がもっと純粋で美しい。
そして、ベアトリクスの美しさは、何といっても形容しがたい物が有る」
と興奮した様子で、語り始め、
「あいつは12の時から、俺に操を立て、ただ静かに待ってくれていた。
そして俺の為に、全てを捧げてくれた。お前とヴィークマンの様な爛れた関係じゃない」
大分酒が回っていたのだろう。周囲が呆れるほどに熱っぽくベアトリクスの良さを語った。
せめてもの救いは、その場にアイリスディーナもベアトリクスも居ない事だった。
おそらくこんな発言を聞いたら、赤面するか、嚇怒してユルゲンを張り倒したであろうから。
「あいつは、重い女だというかもしれないが、俺からしてみれば、他の女が軽すぎる。
俺はあいつの愛の重さで、生きる喜びを改めて、感じ直した」
そう大言を吐き、一気に酒を飲み干すも、さすがに不味いと思ったのか。
彼は、しんとなり、項垂れてしまった。
間もなく後ろから来たマライが、気落ちした彼の手を引いて、奥の方に連れて行った。
呆れ果てたシュトラハヴィッツの所に、ワインを持ってきたハイムが、
「愛を知ると、ああ変わるものなのかな」
「確かにベルンハルトも変わった。愛の力とはそれほどまでかと俺も驚いているよ」
その時、ハイムの心に恐ろしい思いが浮かんだ。
愛の力によって、剣を血濡らさずに世界最強のマシンが手に入るとしたら……
誰か、心を惑わす様な美人
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