第二部 1978年
原作キャラクター編
岐路 ベアトリクスとアイリスディーナ 運命の分かれ道
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っ」
びっくりしたように、彼はあわてて、その書状を隠そうとするも、
「なあ、アベール。
今更お前さんの親父がソ連に亡命した折にNKVDに世話になった事を責めようとは思わない。
ああしなければ、お前さんや親父さんも、シベリヤかカザフスタンのどこかで、朽果てたろうな」
そういって、「ジダン」の青い紙箱を取り出し、タバコを口に咥え、
「NKVDの協力者にならざるを得なかったことは仕方ない」
と紫煙を燻らせながら、言った。
「君に私の父の苦労が判るのかね」
長年の親友であるが、男の答えによっては、刺し違えて死のうする様な血相を見せたアベール。
男は静かに笑って、
「俺も、タイシェットでは、生き残るために何でもやった。
その為に、無実の人間を見捨てた事がある。
4年も同じ釜の飯を食った仲間なのに……、俺は助けられなかった」
タイシェットとは、今日のロシア連邦イルクーツク州にある町。
バム鉄道の中継基地の一つであり、かつては大規模な政治犯及び捕虜収容所が立ち並んでいた。
「君が復員兵なのは、噂で聞いていたが……まさかシベリアに居たとは」
先次大戦の折、180万人近い日本人がシベリアに誘拐されたように、ドイツ人もまた同じような運命をたどった。
約100万人とも200万人とも言われるドイツ人が、奴隷労働力として酷使され、多くの者が落命した。
日本人捕虜の時と同じように、死にかけの者やソ連に恭順の意を示した者から返されて、反抗的な人物は中々返されなかった。
東独の首脳陣には、ソ連で捕虜になり、東独成立に携わった者も少なくなかった。
アベールは、ほっと、胸をなでおろしながら、男の方を向いて、深々と頭を下げた。
「赦してくれ。わたしもどうにかしていたのかもしれない。
ソ連赤軍撤退の報を受け、この数日、この国の安保をどうするか、思い煩っていた」
「お前さんの考えてたことは、うすうす気づいてたよ。俺も力の限り手を貸そう」
アベールは改めて、KGBがシュタージを通じて、彼に送って寄越した密書の中身を、声を震わせながら説明した。
7月2日の未明にゼオライマーに核攻撃を仕掛けてから、わずか1日の間で灰燼に帰したソ連の臨時首都・ハバロフスク。
また、ミンスクハイヴを2時間半ほどで攻略し、G元素を持ち出した後、アルファ部隊と交戦し、彼等を退けた事を明かした。
目頭を押さえるアベールを見ながら、男もまた熱涙をうかべて、この国の将来を思い悩んでいた。
その後、彼等は、食堂に場所を移して、酒を飲みながら、愛娘ベアトリクスについて話し合っていた。
そして、男はアベールに、BETA戦争が一段落着いた、今、シュタージに入れるのが正しい道なのかと、諭しながら。
「それで、お前さんの結論は、どうした」
「ああ
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