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冥王来訪 補遺集
第二部 1978年
ソ連編
白海の船幽霊 ヴェリスクハイヴ攻略戦
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ボット。
 両手からの一閃で、左右の怪獣は、瞬く間に、何百ともなく(しかばね)となっている。
その上にもなお、衝撃波で壊されたハイヴの天井が崩落してくるので、たちまち、出口はふさがってしまった。

 岩間や地下に隠れていたBETAも押しつぶされ、ハイヴの大広間も、須臾(しゅゆ)にして凄惨な地獄となってしまった。
「メイオウ攻撃」の閃光は、絶大で、炸音は地平線まで響き渡り、濛々(もうもう)の煙は、天に達した。

 ヴェリスクハイヴのBETAは、一体も残らず、焼け死んでしまった。
その数は10万体をこえ、火勢のやがて冷さめた後、これを爆撃機のTU-95で上空から見ると、さながら害虫の亡骸(なきがら)を見るようであった。





 グルジア人の男は、彫りの深い(かお)に影を落としながら、消え入りそうな声でつぶやいた。
「間違いない。それは日本野郎(ヤポーシキ)の新型戦術機、ゼオライマーだ」
「そんな、まさか……」
少佐は、思わず火のついた煙草を口から落とす。
「若様、ご冗談を」
グルジア人の男は、容易に処理のつかない未練(みれん)と怒りを、露わにさせて。
「嘘ではない!」
そういうと顔をそらした。
「俺はヘリに乗りながら、奴のビーム砲でハバロフスクが消え去るのを見届けたのだよ」
恐れを浮かべた緑色の瞳を震えさせながら、静かにうつむいていた。

 確かに、ヴェリスクハイヴは、ゼオライマーによって、完膚なきまでに粉砕された。
それにより、アルハンゲリスクの陥落は避けられ、北方艦隊は、ほぼ無傷で残った。
 しかし、グルジア人の男の胸中(きょうちゅう)は、父を救えなかった怒りに満ちていた。
『母さん申し訳ありません。あなたの愛した父を私は助けられませんでした……』
不遇のうちに亡くなった母を思いながら、天を仰ぐ。
『母さん、あなたが受けた愛妾(めかけ)の苦しみ……』
メイオウ攻撃に破壊されたハバロフスクと、運命を共にした父……
『父上、黄色猿(マカーキ)に打ち取られた無念の最期。
ゼオライマーへの恨み、いずれや、晴らしましょうぞ』
そして、再びゼオライマーをこの手で倒すことを、泉下(せんか)の父母に誓ったのであった。
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