第二部 1978年
ソ連編
白海の船幽霊 ヴェリスクハイヴ攻略戦
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物に、違えねえとおもってますさ」
海軍少佐は、シベリア出身だった。
幼少のころから、ウデゲ人の古老の話を聞いていたので、海坊主も身近に感じたのだ。
「まさか……」
しばし驚愕の色を露わにする青年を見つめた後、大きなため息を漏らし、
「いいでしょう。話しましょうか、アルハンゲリスクの海坊主の事を……。
あれは、去年の革命記念日、11月7日の、前の晩のことですかね……」
旧ソ連では11月7日は、ロシア革命の記念日であった(ベラルーシでは今日も祝日)。
男は、淡々と語り始めた。
1977年11月6日。
重金属の雲に覆われたアルハンゲリスク港。
500キロ先のヴェリスクハイヴから這い出るBETA群、総数2万。
この白海を望む一大拠点の防衛を任された、ソ連軍精鋭の第一親衛戦術機連隊は、一斉攻撃を仕掛けた。
砂塵を巻き上げ、吶喊する108機のMIG-21バラライカ。
後方の砲兵陣地から響く砲火は、雷鳴のごとく、どよみ、その周囲は硝煙によってまるで霧が張ったようになっていた。
まもなく、1万体以上のBETA群が姿を見せると、連隊長が檄を飛ばす。
「敵補足。各個撃破せよ!」
20ミリ機関砲が唸り声をあげた。
弾倉に差し込められた2000発のケースレス弾が、隙間なく戦車級や要撃級のボディーに打ち付けられる。
血煙を上げ、倒れていく怪獣の後ろから、一筋の光線が通り抜ける。
戦術機部隊を支援するために低空飛行で援護射撃をしていたmi-24「ハインド」ヘリコプターに、直撃。
瞬く間に、ヘリは爆散し、周囲に緊張が走る。
「光線級が水平射撃をしてきただと!」
「こうなれば、サーベルで光線級を切り刻んでやれ!」
連隊長が、近接長刀を繰り出して、そうつげると、一斉に数機の戦術機が躍り出た。
「А1、Б2、側面に回り込め」
連隊長の駆るバラライカは、眼鏡のように並ぶ二つの大きな目玉めがけて、長刀を一閃する。
長刀がBETAの大きな目玉を切り裂くと、霧のような血煙が舞い、機体に降りかかる。
「ノヴォド・ヴィンスクより入電。新たに東方より約1万近いBETA梯団の接近を確認中との事」
戦艦「ソビエツキー・ソユーズ」艦長が、指示を出す。
「光線級の排除を確認を待たずに、順次艦砲射撃に移れ」
つづて、航海長より、連絡が入る。
「全艦、戦闘配備完了」
「各艦、自由砲撃開始!」
戦艦「ソビエツキー・ソユーズ」に搭載された三連装の46センチ砲が、ゆっくりと陸地に向けられる。
合計9門の艦砲が、各自に火を噴く。
創設以来海戦未経験のソ連赤色海軍では、艦砲は長らく各砲門ごとの独自発射であった。
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