第二部 1978年
ソ連編
白海の船幽霊 ヴェリスクハイヴ攻略戦
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、南イエメンのアデン。
紅海を直進し、エジプトのスエズ運河を抜けて、シリアのタルタス港に向かう。
地中海沿いのタルタス港には、ソ連海軍の一大軍事拠点である、第720補給処がある。
このタルタスの海軍兵站拠点は、1971年にソ連がシリアとの二国間協定に基づき、設置したものである。
米海軍の第六艦隊――1971年当時、第六艦隊の司令本部はイタリアにあった――に対抗するべく、ソ連海軍の地中海第5作戦飛行隊後方支援として開設されたのが始まりである。
場面は変わって、戦艦「ソビエツカヤ・ロシア」の士官食堂。
参謀総長より、密命を受けたグルジア人の大尉は、思慮に耽っていた。
想いをはせる、フィカーツィア・ラトロワについて、一人悩む。
彼女は、男の想い人でありながら、股肱之臣でもあった。
彼は、まだ30にならぬ凛々しい黒髪の偉丈夫であった。
若い青年将校である。瑞々しい肉体の奥底にある、性も盛んであった。
同じ部隊にいたときは、一人中隊長室にいても、自然、ラトロワのたち居いや匂いには、ふと心を捕らわれがちだった。
『なにも俺ばかりではあるまい。恥ずかしがることもなかろう。
戦場に立つ野獣の一人ならば、誰しもがそうであろう……』
彼は、しいて取り澄ます。
それにしても、夜々、彼女の部屋を訪ねる事を思い立ちながら、抑えに抑えて、夜明けを待つのは苦しかった。
益なき疲労に、日々人知れず苦しむほどであった。
そんな時である。
白い海軍士官の制服を着た男が、口付きタバコを燻らせ、湯気の出る紅茶を持ってきた。
「なあ、若様。海坊主って見たことあるかい」
グルジア人は、海軍少佐の男のことを振り返ると、
「何、海坊主だって……。まさかBETAの見間違いじゃないのか」
その瞬間、青年の表情からスゥっと血の気が引いた。
海坊主とは、船の行く手に現れるという化け物の事である。
坊主頭で夜間に出現し、これに会うと船に悪いことが起こるといわれる。
泉や湖、海から出る化け物は、何も日本ばかりではない。
その神話や伝承は、欧州をはじめ、全世界にある。
ソ連も例外でなく、極東のシベリアにいる蒙古系の少数民族、ウデゲ人の神話に似たような例が残っている。
泉の化け物『ボコ』で、旅人などを沼地奥深くに誘い込み、泥土にはまり込ませるという。
「俺はこの目で、カスピ海を渡る要塞級を見たことがある」
海軍少佐は、信じられぬ表情をするグルジア人青年を見た後、自嘲の笑みを漏らす。
「フフフ、そんなもんじゃねえんですさ。
あれは俺がウデゲ人の爺やに聞いたボコという化け
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