第一部 1977年
序文
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初めに申し上げたいのは、この小説は『シュバルツェスマーケン』の二次創作小説『冥王来訪』をお読みでない方は理解できないほど原作から乖離した話となっています。
拙作である『冥王来訪』は、正確に言えば、シュバルツェスマーケンの舞台となる1983年の東ドイツからさかのぼること、11年前の1972年の東ドイツから始まる『隻影のベルンハルト』の二次創作です。
私の書いた二次創作の物語は、パレオロゴス作戦開始前の1977年夏からスタートし、原作キャラたちへの多くの変化をもたらしました。
多くのシュバルツェスマーケン二次創作では、敵組織のシュタージの女幹部であるベアトリクス・ブレーメの最期は悲惨です。
大半はテオードル・エーベルバッハとの決戦の末に、この世のすべてを呪いながら死んでいきます。
あるいは望まぬ相手の情婦になるか、反乱軍に下って、テオドールの愛人になるなどです。
PIXIVで活躍をされているラブラマ氏などはベアトリクスの生存を前提に二次創作を書いていますが、彼女が心から愛したユルゲン・ベルンハルトはすでに鬼籍に入った状態でした。
2021年の段階で私が確認したところ、ユルゲンが生存した前提の物語はありませんでした。
ベアトリクスが闇落ちした原因は何か。
浅学菲才な私が、内田弘樹先生の原作や、原案者であり、age社長の吉田博彦氏の発言から考察したところ、ユルゲンの死が一つの基因になったという結論に達しました。
ユルゲンが生きていれば、ベアトリクスは違った結末を迎えたでしょう。
彼女は、ソ連KGBを背景とするシュタージの力を借りて東ドイツを国家改造するという、非常な手段はとらなかったでしょう。
多くのシュバルツェスマーケン二次創作では、リィズ・ホーエンシュタインの救済にばかり、目が向けられています。
リィズの事件が起きる段階では、他の多数のヒロイン達が救われません。
――例をあげれば、軍紀の乱れから敗残兵たちより望まぬ姦淫を受けたシルヴィア・クシャシンスカ。
戦況悪化により少年兵の応酬によって年下の恋人と永遠の別れをすることになるイングヒルト・ブロニコフスキー。
父・シュトラハヴィッツ少将が処刑されるカティア・ヴァルトハイム。
唯一の肉親で、最愛の兄ユルゲンを自分の手で殺すことになるアイリスディーナ・ベルンハルト等々……
起きなくてよい愛別離苦や怨憎会苦から、ヒロインたちを救うにはどうしたらいいか。
劇中で一切明らかになっていないミンスクハイヴ攻略作戦である「パレオロゴス作戦」の結末を変えればよいのではないか。
でも、それではベアトリクスは、実父アーベルの推薦でシュタージに入ってしまう。
ベアトリクスがシュタージに入れば、グレーテルとその恋人であるカレルの離別の原因となる事件がベアトリクスに摘
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