第二部 1978年
原作キャラクター編
憂懼 BNDのユルゲン調略工作
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バルクと女工作員、ユングを呼び出せ」
そう告げると、くつくつと不気味な笑い声を上げた。
アリョーシャ・ユングは、昔なじみの友人、ヨアヒム・バルク陸軍大尉とともにの会議室に呼び出された。
黒の眼鏡に、灰色の婦人用パンツスーツを着て、深々と一礼をし、
「閣下、わたくしたちを呼び出した理由は何でしょうか」と問いただした。
閣下と呼ばれた人物の脇に座る、下卑た顔をした80を超えた老人が
「ユングよ、忙しい中、良く来てくれた。早速だが、話がある。
お前の専門は東だったから、向こうの戦術機隊長のユルゲン・ベルンハルトを知っておろう」
その言葉に、危うい気配を感じたのか、ユングは身を強張らせる。
「ベルンハルトの妹は、木原に惚れこまれ、結婚を前提に話を進めているという。
木原は妹婿で、ベルンハルトは義理の兄みたいな存在になろう。
だから、奴を誑し込め」
「えっ」とばかり、彼女は色を失って立ちすくんだ。
「そ、そんな……」
ユングと言えば、その狼狽ぶりは、実に哀れなほどであった。
表情が凍り付いたユングに向かって、老人は、まくし立てる様に、
「BNDの工作員でいたかったら、何が何でもやってみろ。
確か、お前は独身で、男との浮いた話の一つも効いたこともない」
彼女は、いたたまれない羞恥を覚えて、顔をそむけた。
「だからこそ、あやつを落とせる可能性が、僅かばかりあるのだよ」
黒いジャケットで覆われた両胸を、恥じらうように覆う。
「もし、あやつがお前に興味を持ち、一緒になれば、木原の親族も同じ。
ボンの政府の安全は、いやドイツ国家の永続性は保障されたものとなろう」
だが、旧友バルクの前ではあまりにも見苦しい真似をするわけにはいかず、眉を顰めて、堪える。
「唯一無二の女性の武器を用いるのだ」
込み上げる羞恥に全身を熱らせる様は、わきに立つバルクが心配するほどだった。
「考える時間をください」
これ以上、同輩のバルクと、面と向かっているのは、耐えられなかった。
ユングはきつい口調でそのように告げると、背を向けて逃げるようにして、その部屋を後にした。
彼女にできることは、ドアを勢い良く閉める事だけだった。
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