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冥王来訪 補遺集
第二部 1978年
原作キャラクター編
憂懼 BNDのユルゲン調略工作
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その奥深くに潜り、白塗りの装甲を赤黒く染めながら四たび戻って来た。
 マサキの駆るゼオライマーは、万夫不当(ばんぷふとう)との言葉に相応しい。
彼の首を取ろうとした、精鋭KGBや赤軍の特殊部隊(スペツナズ)を、まるで赤子のように扱い、50メートルにも及ぶ巨体を駆って数百の精兵を踏みつぶした。
ソ連政権は、議長以下首脳部の首を取られ、()()うの(てい)で、日本海面前のウラジオストックまで落ち延びる無残な姿を天下に(さら)した。
男は、その事実に身震いしていた。

「ポーランドが、ナポレオンに女をくっつけたように、我等も美人計(びじんけい)を仕掛けようではないか……。
そうよのう、ベルンハルトが、留学するというニューヨークに飛んで、奴等へ工作を仕掛けよ」

 男が言ったポーランドの女とは、ポーランド貴族の、マリア・ヴァレフスカ侯爵夫人である。
1804年のころ、実家の借財の肩代わりのため、老貴族、ヴァレフスキ侯爵と結婚した。
46歳も年上の夫に絶望にした18歳の若妻は、悲嘆の日々を送っていた。
 そんな折である。
フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが、1806年12月18日にワルシャワに入城した。
プロイセンと帝政ロシアの間で長く苦しい歴史を歩んできたポーランドにとって、ナポレオンは救世主も同然であった。
 翌年の1月7日に新年の舞踏会に夫と招かれた彼女は、ナポレオンとの謁見の機会を得る。
その際、壮年(そうねん)の皇帝は、彼女に一目ぼれしてしまった。
信心深く貞淑(ていしゅく)な彼女は、この皇帝からの熱心な恋文にも、豪奢(ごうしゃ)な贈り物にも無関心を貫いた。
 しかし、時代が許さなかった。
ポーランド復興の望みをかけた貴族たちの願いもあって、望まずして、大帝の公妾(こうしょう)となった。
次第に二人は、本当に惹かれ合うようになり、1810年5月10日に男児を生んだ。
後のアレクサンドル・ヴァレフスキである。

 時間がたつにつれて、次第に大帝の寵愛(ちょうあい)は冷めていったが、彼女の思いは深くなる一方であった。
その愛は本物で、皇帝を退位しても、武運(つたな)く百日天下で敗れ去っても、変わらなかった。
大帝の妃たちの中でただ一人、流刑地セント・ヘレナ島への同行を涙ながら求めるほどでった。
大帝が、遠く大西洋のセントヘレナに流された後は、拒食症になり、衰弱していった。
ナポレオン大帝のことを思慕(しぼ)しながら、1817年12月11日に31歳で短い生涯を閉じた。


「あのアジア人の男も、BETAが無い世界では不要……死んでもらうのよ。
新開発の動力と内燃機関の秘密を、一刻も早く手に入れるのじゃ」
老人は、ふいに不適の笑みを浮かべ、
「そうよのう、
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