第二部 1978年
原作キャラクター編
憂懼 BNDのユルゲン調略工作
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1978年8月15日。
ここは、西ドイツ臨時首都のボンの官衙に隠れる様にして立つドイツ連邦情報局。
その一室で男達は、今後のドイツ連邦の先行きに関して、密議を凝らしていた。
先頃のハバロフスクの首都機能喪失とウラジオストックへの急な遷都に関しての討議が成されている最中。
ふいに、会議の最中、一人の情報局員が立ち上がり、ひじ掛け付きの椅子に腰かけた初老の男に問うた。
「局長、一つ気掛りなことが御座います。
例のゼオライマーと称される日本軍の持ち込んだ新型戦術機ですが……」
紫煙を燻らせながら、初老の男が、応じる。
声の主は西ドイツの諜報部門のトップである、連邦情報局長であった。
「捨ておけ、黄人とて必死だ。媚び位、売るであろうよ……、それ位が精一杯の能力よ」
彼は、なおも食い下がった。
「しかし、そのゼオライマーによってBETA戦に少なからず影響を与えていると聞き及んでおります」
男の顔を覗き込む。
「我々のBETA戦には思い通りの成果を挙げられずに居りました。
ですが、その新型機によって、米ソの対立にさえ、変化の兆しが見え始めています。
これは、どう思われますか……」
男は、件の情報職員を宥める。
「一旦、その話は後回しだ……」
彼は無言のまま、着席した。
初老の男は、腕を組むと、そちらを見据える。
「話は変わるが……、ドイツ憲法擁護局が動く前に、ユルゲン・ベルンハルトの調略に掛かる。
昨今話題になっている、木原に自分の妹を差し出した、新進気鋭の貴公子……。
ベルンハルトという男、どの様な人物なのかね」
BNDの会議室の中に、声が響き渡る。
「局長、お答えします。
当該人物は、1954年生まれで、空軍士官学校主席卒業。
公的な情報によれば、離婚した両親は健在。
父親は東の外務省勤務、母親は、シュタージ工作員と再婚。
異父弟が一名いるとの事。
5歳下の同母妹が一名居り、現在士官学校に在学中。
彼の妻は、妹と同い年で、アベール・ブレーメの一人娘です」
男は、顔に右手を当てると、少し思い悩む。
暫しの沈黙の後、再び尋ねた。
「ソ連亡命歴のある人物の女婿だと。思想的背景は……」
黒縁のベークライト製の眼鏡を持ち上げ、答弁をした官吏の方を改めて見る。
「関係あるか分かりませんが、現議長の秘蔵っ子という噂のある男です。
警戒したほうが良いでしょう」
局長が黙る中、官吏達は口々に思ったことを言い放つ。
「待て、あの男は長らく寡男だったはず。あの年頃の子息は……」
「そんな、まさか……」
共産国家に在って、政治家の個人情報は最重要機密であった。
史実に根拠を求めれば、アンドロポフと、チェルネンコ
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