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星河の覇皇
第八十五部第五章 北京宣言その五十七

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「よく見ればな」
「その正体がわかりますね」
「大石もそうでしたし」
「それで、ですね」
「見破ってだ」
 そうしてというのだ。
「然るべき手を打つべきだ」
「そういうことですね」
「有能な敵には有能な敵への手を打つ」
「そうしていきますね」
「的確に」
「そうだ、短い期間だけ愚かな様に見せてもな」
 それでもというのだ。
「わかる者にはわかる、だが忠臣蔵の物語ではな」
「吉良は騙されましたね」
「そして同志の浪士達も」
「そうなっていましたね」
「あれは物語だからだが」 
 だから大石の都合の様に動いていたというのだ、物語自体が。所謂ご都合主義と言われる展開である。
「しかしだ」
「それでもですね」
「味方も騙されていましたね」
「彼等も」
「あれは凄かったということか」
 物語の中ではとだ、キロモトは述べた。
「果たして」
「物語の中では切れ者ですね」
「歌舞伎や浄瑠璃でも」
「その様になりますね」
「その中でも」
「そうだな、だがそれは物語のことでだ」 
 創作の中での忠臣蔵の話だというのだ、実際にあった話であるがそれでも創作によって有名になった世界であるのだ。
 それでだ、キロモトも言うのだ。
「実際にあの程度を見抜けないとな」
「失格ですね」
「そう言っていいですね」
「それだけで」
「そうだ、政治家としてあの程度で騙されては」 
 それこそというのだ。
「どうにもならない」
「左様ですね」
「何しろ浪人になってからの芝居です」
「それまでは普通に家老として務まっていたのです」
「そして浅野内匠頭への忠誠も見られた筈です」
「そういったものを見ないで判断しては」
「それだけで失格です」
「そうだ、吉良も赤穂浪士達もだ」
 味方の者達もというのだ。そのことを言うのだった。
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