第三部 1979年
孤独な戦い
姿を現す闇の主 その2
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さて、その頃マサキたちの関心は、難航する日ソ会談に向けられていた。
マサキのは、会場となったクルンバ・モルディブの外で起きた襲撃事件を知らなかった。
会議の最中、マサキは、ソ連を盛んに非難した。
のみならず、外交団長の御剣は、マサキの誘拐未遂を例に挙げ、散々に悪罵の限りを尽くした。
ところが、御剣の副官を務める紅蓮醍三郎は、後方の鎧衣から急報を受けた。
「報告によれば、武装した集団が、マーレ島の政府庁舎を制圧中。
市中の外人を捕縛した後、漁船を仕立てて、ヴィハマナフシに向かっている」
襲撃事件の報告は、マサキを激昂させるに十分だった。
「何!モルディブでクーデターだと……いったい誰が」
マサキと日本側スタッフが襲撃事件に大童になる一方、ソ連側は冷静沈着だった。
すでにソ連は、インド軍警備隊の中にいるGRU工作員から、クーデターの報告を受けていた。
一方を聞いたブドミール・ロゴフスキー中尉の動きは、早かった。
そこで彼は、万事は休すと思ったか、方針一転を参謀総長に献言した。
「今回のクーデター騒ぎの裏には、MI6が絡んでいるとみるべきでしょう」
参謀総長は戦機を観ること、さすが慧眼だった。
「同志ロゴフスキー、撤退だ!
直ちに戦艦に乗り、インドへ撤退するッ」
「まだ同志ラトロワたちが戻っていないのに……」
「戦術機隊長と、ラトロワは後回しだ」
未だラトロワとグルジア人大尉は、暴徒の管理下に置かれていた。
SASR大佐が指揮する傭兵たちが監視する形で、市中に留め置かれていたのだ
「一刻を争うぞッ!もたもたするな」
ソ連外交団は、近海に停泊していた戦艦ソビエツキー・ソユーズを呼び寄せる。
彼らは、島の港から船に乗り込むと、大急ぎでモルディブを後にした。
マサキの計算に、狂いが生じた。
まさか、このインド洋に浮かぶ常夏の島、モルディブ。
白昼堂々、インド軍の警備の裏をかいて、テロリスト集団が、クーデター事件を起こすなどとは……
大いなる誤算であった……
マサキは、興奮のあまり、唇の色まで変えてしまった。
紅蓮のいう報告の半分も耳に入らないような目の動きである。
恟々と心臓を打つような胸の音に、じっと黙っていられないように、
「ええい!警備役のインド兵共はどうなっているのだ!」
「まだ何も連絡を……」
「見損なったぞ、この役立たずどもめ!」
マサキは罵りつつ、不意に立ち上がった。
後ろにいる警備兵の手から、強引に彼が愛用するM16小銃を引ッたくった。
そして、あたふたと、クルンバ・モルディブの外へ出て行くので、美久もあわてて後を追った。
後ろから追いかけながら、問いかける。
「どちらに行かれるのですか」
マサキは、振り向いて
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