第一章
11.神託
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も、まだここにいないといけない気がするんだよね」
しばし、両者が無言で視線を交錯させる。
ぶつけ合っているわけではない。だが溶け合うようでもない。
「……わかった。今回は引き下がろう」
その静寂を破ったのは、ローレシア王・ロスだった。
「アンタがボロボロなのはわたしのせいだし、少し休んでいくならここ使っていいよ」
「いや、いい。ローレシア城で空を飛ぶ不審なものが現れたという手紙をさっき鳥が届けにきた。念のためすぐ国に戻る」
「了解」
「君を連れて行くことを諦めたわけじゃない。それは忘れないでほしい」
「わたしは勝手にするから、気にしなくていいよ」
「俺の意志だ。いつかまた必ず戻ってくる」
「あっそ。まあそれもアンタの勝手だね。ご自由に」
黒焦げの青い剣士は白い少女に背中を見せると、扉を開けた。
そこから一歩だけ踏み出し、足を止める。
「もう一つ。邪教の残党がふたたび動き出すならば、俺はそれを潰さなければならない」
白い少女は、それには返事をしなかった。
木の扉が閉まるのを、ただ見ていた。
◇
発見できた白骨遺体をすべて墓に納め終えたフォルは、大神殿が崩壊した場所のがれきの片づけに入っていた。
がれきは重かった。
「ん……っ」
フォルの細腕では、小さいがれきすら持ち上げることが難しい。
「あのときはけっこうな力が出た気がするのに……」
大きながれきに至っては、転がすことすらできず。一人で作業しているのについぼやきが出てしまった。
ローレシア王と戦う前、アークデーモンの若い男とバーサーカーの少女をはるか遠くに突き飛ばしている。杖の不思議な力があったとはいえ、あのときと同じくらい力が入れば動かせるはずなのに――そう思ったのである。
「それは人間で言うところの、火事場の馬鹿力というやつじゃないかのお」
「――!?」
どこかで聞いた声がして、フォルは仮面を向けた。
そこには、アークデーモンの姿があった。
「あれ? あなたは」
アークデーモンの姿は見慣れていたため、一人一人の容姿の違いはわかる。現れた彼は、アークデーモン族の今現在の仮代表であるはずの、族長代行だった。
なぜここに? と驚くフォルのもとに、ゆっくりとした足取りで歩いてくると、ピクリともしなかった大きながれきをひょいと転がした。
「ふむ。そんなに重くないのお」
そのままゴロゴロと転がし、フォルが小さながれきを集めていた場所の近くで、丁寧にとめた。
「あっ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
「なんじゃ?」
「いえ『なんじゃ』ではなくてですね……」
「おぬしの力じゃ奇跡でも起きん限りこの大きさのがれきは動かん
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