教授で子持ちのマスター
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? 私はその深淵を、どこまでも知りたいのですよ」
無機質だった教授は、両手を大きく広げる。
カーテンの合間から差し込む光が黒い彼の姿を包む。すると、その鎧を反射し、教授の姿が輝いて見えた。
温もりのない鋼鉄の体と声だったのに、彼はこの一瞬のみ、活き活きと活力を得ていた。
「……失礼。少し、熱が入ってしまいましたね」
「お父さん、話長くてごめんね」
教授が語り尽くしてスッキリしたところで、ハルトの袖をあの少女が引っ張る。
「あ、ああ。大丈夫だよ」
「まあ、そういう訳ですから、願いを叶えるための戦いなどに興味はありません。えりかさんを連れて行きたい時は、一言言っていただければ構いませんよ」
「蒼井を呼びましたか?」
コウスケへ小さな講義をしているえりかが反応する。教授が彼女へ手で制すると、えりかは再びコウスケへの教鞭を取った。
「……いいんですか? 彼女には以前、とても助けられました。他の参加者を止める協力をしてもらえるのなら、頻繁に力を借りることになりますけど」
「私は偶然魔術師だっただけの身。願いを叶えられると言われましても困りますね。聖杯とやらに命の神秘を全て教えてくれと願うのも面白くありません」
少なくとも、彼は聖杯戦争のために戦うことはない。
その事実に安堵し、ハルトは「ありがとうございます」と教授に頭を下げた。
「ああ、そうだ。結梨。彼に私の連絡先を渡してください」
「分かった!」
結梨。
それが、その少女の名前なのだろう。
彼女は書類の山の中に潜り、すぐさま中から何かを手に戻って来た。
「ありがとう。……名刺?」
「失礼。携帯電話はどこかに埋もれてしまいましてね。時間がかかりますので、今日のところはこれで、私とのコネクションにして下さい」
「分かりました。……コネクションって何?」
「連絡先って意味ですね」
えりかが伝えてくれた。
彼女の前では、コウスケが目を輝かせながらノートを書き連ねている。
「よかったですね。松菜さん。これからは、蒼井も味方になります!」
「ありがとう……! 本当に心強いよ! 教授も、本当にありがとうございます!」
「ええ。これからもよろしく」
教授はそう言って、手を差し伸べる。
これ以上喜ばしいことがあるだろうか。
ハルトはそう思いながら、教授の手を取る。彼の手の大きさに関心していたところで、背後からノック音が響き渡った。
「どうぞ」
ハルトから手を放すと同時に、すぐさま無機質な声に戻った教授が告げる。
すると、あの廃墟然とした廊下へのドアが開き、また別の来客が姿を現した。
「おや、おや。貴方でしたか」
その姿を見て、教授が無表情に
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