教授で子持ちのマスター
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「以前、事故で大怪我をしてしまいましてね。あまり人に見せられないものなのですよ」
「そう……なんですね」
ハルトは頷いた。
「おいハルト、何ビビってんだよ」
「ビビッてないよ……」
後ろから小突いてきたコウスケの手を振り払い、ハルトは続けた。
「えっと、教授、と呼んでもよろしいでしょうか?」
「ええ。事実、教授ですからね」
教授は深く頷いた。やがて彼はハルトの目の前で、近くの棚から何やら書類を取り出し、何かを書き出し始める。
「ああ、失礼。まだ仕事が立て込んでいましてね。作業の手を止められませんので、そこは失礼しますよ」
「は、はあ……」
「蒼井さん。今日のこの後スケジュールを教えてくれませんか?」
「今日は十五時半から市長さんと打ち合わせです。十七時半からはリモートで生命神秘論応用の講義、二十時まで進化論の新論文を読む予定になっています」
ハルトのすぐ近くで、えりかが散らばった書類を拾い上げながら応えた。
スケジュールが記されているホワイトボードに目を一切くれず、ひたすら書類を集める彼女。ハルトがホワイトボードと照らし合わせると、彼女はその通り、教授の予定を全て的確に
「おやおや。そうでしたか。それでしたら、まだお話する時間はありそうですね」
教授は壁にかかっている時計(下半分は積み上げられた書類に隠れて見えない)を見上げる。
「えりかちゃん凄いな……そんな細かい内容、よくスラスラ言えるね」
「ありがとうございます」
「本当にすげえ……そんな記憶力、オレにもあればなあ……」
コウスケはえりかへ羨望の眼差しを浮かべた。
「ああ、お前今授業についていけてないんだっけ」
「さっきの講義、ノート取りそびれちまったからなあ……」
「どの科目ですか? 蒼井、教えられますよ」
「……マジ?」
えりかのその言葉に、コウスケは顔を輝かせた。
「はい。蒼井、大学の講義にも興味があって、幾つか受講しているんです。もし多田さんが受けられなかったものを、私が受けていたら……」
「ありがてえ!」
コウスケが泣き叫びながら、えりかを拝みだす。背負っていたリュックを下ろし、早速彼はえりかから寝過ごしたらしき講義の情報を聞き出している。
「おやおや。彼はどうやら、ここの学生のようですね」
教授はほんの少しだけ首を動かしてコウスケを見ている。
だが、それはほんの一瞬。
「多田コウスケ。蒼井さんとは、その紹介で出会いました」
「ほう……それでは、多田君と君が聖杯戦争の参加者というわけですね」
「はい。松菜ハルトです」
ハルトは改めて名乗る。
これまで出会ったマスターは、ほとんどが若者だった。
目上の人物と関わるのはラビ
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