教授で子持ちのマスター
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た。
山のように部屋を占有するは、その部屋の間取りを明らかに変えるほどの量であり、見るだけで圧倒される。
「何これ……」
「あ! お客さん!」
そして、この部屋で最初にハルトたちを迎えた、紙の山の背後からひょこっと現れた人物。それは、教授と呼ばれてまず連想するような壮年の男性ではない。
まだ小学生かと思えるほど幼い少女。薄い紫色の髪を三つ編みのように纏め上げ、薄暗さの残る部屋から笑顔で現れた。
「また子供……この大学、子供多すぎない?」
「オレたちが遭遇しているのがレアケースの連続ってだけだ」
「……えりか、この人たちは?」
少女はハルトの顔を珍しそうに眺めながら、えりかに尋ねた。
えりかは笑顔のまま、少女へ膝を曲げた。
「この人は松菜ハルトさん。今日、お父さんとお話しようって約束をしていた人ですよ。お父さんを呼んできてくれませんか?」
「うん。ちょっと待っててね」
少女はハルトたちに笑顔を見せた後、紙の山の中へ戻っていった。
「お父さーん。お客さんだよ!」
「……お父さん?」
「あの子のお父さんですよ。私のマスターです」
「まさかの子持ちマスター……」
「お父さーん!」
紙の山の奥で奮闘する少女。
やがて彼女は、黒く少し太い布切れを引っ張り出そうとしていた。
いや、あれは布切れではない。
彼女の「お父さん」の右腕だった。その分厚く黒い袖が、大きな布のように見えたのだ。
やがてむっくりと姿を見せる、シールダーのマスター。その姿に、ハルトは言葉を失った。
「ああ、蒼井さん。お帰りなさい」
聞こえてきた第一声は、落ち着いた男性の声。
全身を黒いローブを覆った大男だが、その素顔は分からない。鉄のように冷たい仮面を面に付け、その中心には縦に走る線が仄かな紫の光を灯している。
「あれがマスター?」
その姿に、ハルトは目を見開いた。
仮面には覗き穴らしきものが見当たらない。果たしてどのような仕組みでハルト達を視認しているのだろうか。
「おやおや。君は……」
「……!」
大男は、じっとハルトの顔を見下ろす。
呆然としてしまったハルトは我に返り、じっと人の顔を見つめていたことへ謝罪しようとするが。
「ああ、失礼。この仮面ですか?」
教授は自らの面を指差した。
冷たいガラスのような仮面。黒一色の面は後頭部までを覆い、黒い服装と相まって、彼を人間から黒い何か別の生命体なのではないかと考えさせる。だが、彼が生きているというように、仮面の中心部には紫の縦線が走っており、それが彼の気持ちの動きを表わしているのか、ほんのわずかに紫の光が揺れる。
彼が指で面を叩くたびに、コンッ、コンッと硬い音が鳴り響き、
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