第百十五話
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第百十五話 悲しい過去
博士は動物園の中の色々な生きものたちの姿が入れられた大きな石碑の前に皆を連れて来た、そのうえで言った。
「これが今回な」
「僕達に見せたかったものですね」
「今回な」
「そうですね」
「左様、これはな」
小田切君に言うのだった。
「二次大戦の時にじゃ」
「犠牲になった生きもの達ですね」
「戦争が苦しくなってな」
日本が劣勢になってというのだ。
「動物園の生きもの達への餌もじゃ」
「なくなってきて」
「それでじゃ」
「安楽死させていったんですね」
「そうじゃ」
そうだったというのだ。
「それで」
「慰霊をして」
「安らかに眠ってもらう為にな」
まさにその為にというのだ。
「こうしたものを建てたのじゃ」
「そうですね」
「戦争になるとな」
博士はさらに言った。
「こうしたことも起こるのじゃ」
「そうですよね」
「わしはならず者は殺すが」
それでもというのだ。
「こうした命はな」
「犠牲にしないですね」
「だからな」
それでというのだ。
「こうしたことがあることはな」
「よく思われないですね」
「うむ」
そうだと小田切君に答えた。
「どうしてもな」
「そうですか」
「平和だの言わんが」
それでもというのだ。
「わしはわしが楽しみで殺す以外はじゃ」
「命を奪うことはないですね」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だから思うところもある」
「ここに来たら」
「そうなのじゃよ」
こう言うのだった。
そして一緒に石碑を見た、博士の顔は思うところのあるものだった。
第百十五話 完
2023・11・18
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