八十 第二ラウンド
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首を掻き毟るが、シャボン玉という密閉された泡からは逃れる術はない。
「酸の海で溺死しろ」
シャボン玉の中身を酸に変化させたウタカタは、涼しげな顔で非情に言い放つ。
溶かされてゆく地獄道の顔を見ていられなくて、木ノ葉丸は顔を逸らした。
六尾の人柱力であるウタカタ。
彼の能力はシャボン玉を操り、相手を無力化させる為に窒息させたり、性質を酸に変えたりすることが可能なのだ。
六尾の能力自体も相手の皮膚を溶かす液体を分泌することができるので、相性の良い尾獣と人柱力である。
やがて、ドッと地獄道の身体が地面に転がる。頭があったはずの箇所はもう見る影もない。
シャボン玉が弾けて消えた時には、もう骨までも残っておらず。
後に残ったのは首のない死人だけだった。
「──もういい」
揺るぎない決心と変わらぬ決意。
決して九尾の人柱力を差し出さないという意思表示に、ペインは深く嘆息した。
「神からの最後通告だったが、痛みを知らぬ者に平和を説いたところで馬の耳に念仏だったな」
五代目火影と、彼女を守る暗部達に背を向ける。
無防備なその背中に攻撃を仕掛けたいものの、能力が未だに把握できない敵に此方から仕掛けるのは愚策。
そう警戒して手を出さなかった暗部達だが、彼らは最後のチャンスを無駄にした。もっとも攻撃したところで弾かれるのがオチだが。
「差し出さぬのならば焙りだすのみ」
この里にいるにしろ、いないにしろ、人柱力はそう易々と死にはしない。
不在だったところで故郷である里に何かあれば、何かしら行動があるはず。
ならば。
「痛みを理解できぬのなら神直々にその身を以って教えてやろう」
おもむろに屈む。強くチャクラを足に集中させながら、ペインは双眸を閉ざした。
語る。
「痛みを感じろ」
踏み躙られた洗濯物とは違って、洗っても洗っても消えない血。
「痛みを考えろ」
踏み潰された野菜のトマトのようにぐちゅりと潰れた人の鮮血。
「痛みを受け取れ」
踏み荒らされた人形の中身が飛び出る様は綿か、内臓と血の違い。
「痛みを知れ」
どれだけ平和を望んでも力を持たぬ小国は大国に甚振られる運命。
脳裏に過ぎる景色は戦場ではなんでもない日常。
だからこそ大国だからと言ってぬくぬくと平和を謳歌し、いざこうして強襲されれば自分が一番不幸だと嘆く人間の愚かさが。
今まで甚振ってきた小国が牙を剥いた途端に、言いがかりをつけられたと喚く大国が。
「…笑止。戦いとは、双方に死を、傷を、痛みを伴うもの。一方のみが理不尽に虐げられるなどあって
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