第四章
[8]前話
そうしてだ、黒髪の王女とその夫将来の女王それに王が答えたものを彼に尋ねたのだった。
「さて、何がよいか」
「苺がいいかと」
少年は王に答えた。
「民達が喜び売れるなら」
「そして国を豊かにするならか」
「苺は多く容易に作ることが出来ます」
「だからか」
「はい、それにです」
少年はさらに話した。
「甘く美味いです」
「確かにな」
王もそれはと頷いた。
「その通りだ」
「しかも干せば日持ちし」
こちらのことも話した。
「売ることも出来てです」
「国を富ませられるか」
「そうも出来ますので」
だからだというのだ。
「それならです」
「苺がよいか」
「そう思います」
「成程、苺なら」
「確かに」
黒髪の王女と彼女の夫もそれはと頷いた。
「多く作りやすくて美味い」
「民達も食べて喜ぶことが出来て」
「しかも干して日持ちさせられて」
「それを売ることも出来る」
「これはいい」
「苺なら」
「そうであるな」
王もそれはと頷いた。
「では羊飼いの言う通りにだ」
「国中で苺を作らせて」
「そうして民に食べさせて売らせますね」
「そうしよう」
そうしようと決めてだった。
実際に国仲で苺を作らせた、すると苺は少年の言う通りに多く採れてその甘い味で民を楽しませてだった。
普通に売ったり干して売ったりして民を富ませた、その富が国にも入って国も潤った。しかも少年のやり方でだ。
羊を飼うと羊達はよくまとまり狼や熊にも襲われなくなった、王はここまで見て金髪の王女に笑顔で言った。
「あの少年を貴族にしてだ」
「そうしてですか」
「そなたの夫としよう」
「有り難き幸せ」
「そして大臣の一人にもする」
王はこうも言った。
「これからもその頭をだ」
「用いてもらって」
「そしてだ」
「国の為に働いてもらいますね」
「そうしてもらう」
こう金髪の王女に話した。
「是非な」
「私もそうして欲しいわ」
「私もだ」
姉の黒髪の王女だけでなく彼女の夫も言ってきた。
「是非そうしてもらいたい」
「その頭を我が国の為に使って欲しいわ」
「私達は次にこの国の主になるが」
「そうした大臣がいてくれると有り難いわ」
「そうですか、それでは」
金髪の王女は二人の言葉にも頷いてだった。
そのうえで羊飼いの少年貴族となった彼を夫に迎えた、すると。
少年はそれからも何かと知恵や知識を出して国を助け豊かにした、楓の笛を吹きつつ語ったので何時しか楓笛卿と言われる様になった。ハンガリーの古い話である。
楓の笛 完
2023・6・14
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