第二章
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実際に食べてみた、夫はまずは肉を食べた、すると仰天して言った。
「何だこの甘さは」
「甘い?お塩は入れたよ」
「いや、塩の味なんかしなくてな」
それでというのだ。
「甘いんだよ、それもかなりな」
「そんな筈ないよ」
妻は夫に怪訝な顔になって言葉を返した。
「絶対にね」
「それがな、この樹液を煮たのがな」
肉に付いているそれを舐めつつ言うのだった。
「かなりな」
「甘いのかい」
「そうだよ」
「あっ、本当だ」
「そうだね」
「甘いよ」
子供達も言ってきた、一番上が男の子で下の二人は女の子だ。三人共目と鼻は父親に似ていて口元と耳は母親に似ている。
「それも凄く」
「お父さんの言う通りにね」
「かなり甘いよ」
「そんな筈ないけれどね」
妻は子供達の言葉に首を傾げさせて応えた。
「絶対に」
「いや、それがな」
夫はまた言った。
「とんでもない位にだ」
「甘いの」
「だからお前もだ」
夫は妻に真剣な顔で言った。
「舐めてみろ」
「煮た樹液をなのね」
「そうしてみろ」
「そこまで言うなら」
妻も頷いてだった。
実際に自分の椀の中にあるそれをすすってみた、すると。
「これは」
「甘いだろ」
「物凄くね」
こう夫に答えた。
「これは」
「そうだろ、本当にな」
夫はさらに言った。
「甘いんだ」
「楓の木の樹液を煮たら」
「それを舐めたらな」
「そうなのね」
「これは凄いぞ」
夫は目を輝かせて妻にこうも言った。
「本当にな」
「そう言ってくれるのね」
「ああ、それでな」
夫はその言葉を続けた。
「有り難うな」
「何でお礼言うのよ」
「俺にも子供達にこんな甘いもの味あわせてくれてな」
そうしてというのだ。
「有り難うな、それにな」
「それに?」
「このこと皆に教えたらな」
楓の樹液を煮るととても甘い液になることをだ。
「皆喜ぶぞ」
「そうね、それじゃあね」
「ああ、皆にも教えような」
「そうしましょう」
「皆にこの甘さをもたらせたことについてもな」
それについてもというのだ。
「有り難うな」
「だからお礼はね」
「いや、言わせてもらうさ」
妻に優しい声で告げた。
「実際に楽しませてもらってるからな」
「それでなのね」
「ああ、そうだよ」
こう妻に言うのだった、そしてだった。
夫婦で楓の樹液を煮るととても甘い汁を得られその甘さを楽しめることを人々に伝えた、するとだった。
人々は以後楓の樹液を集めてそれを煮て甘さを楽しめる様になった、これがサトウカエデからシロップを採ることのはじまりでありセネカ族に伝わっている話である。そのはじまりは妻の思わぬ行いと夫のこのことへの感謝の二つからだった
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