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罵倒
第三章

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「そうしようか」
「いいね、ただね」
 ここでだった、山田は。
 佐竹を見てだ、こう言ったのだった。
「やっぱり今も忘れられないかな」
「あのことだね」
「うん、嫌いだと」
「どうしてもね」
 佐竹も否定しないで答えた。
「態度に出るよ」
「顔にもだね」
「自分でもわかっているんだ」
 こう答えるのだった。
「嫌いだとね」
「徹底的に嫌うことは」
「心底憎んでね」
「そうなんだね、ずっと罵られていると」
「いや、何でもないかっていうと」
 それならというのだ。
「忘れられないから」
「だからだね」
「抵抗が出て」
 そしてというのだ。
「そのうえで」
「嫌いだと否定するね」
「全否定でね、僕はあれなんだよ」
 佐竹は厚切りベーコンを焼いたものを食べつつ話した。
「見方が全肯定か全否定か」
「どちらかだね」
「嫌いじゃないなら好きで」 
 そうした感情を持ってというのだ。
「否定しないよ」
「そうだね」
「けれど嫌いだと」
 そうした感情を持つと、というのだ。
「もう徹底的にね」
「嫌って全否定して」
「態度にも顔にも出るよ」
「あの、罵られるって」
 二人の話を聞いてだ、鬼頭は言った。
「そうした見方をする位になるんですか」
「なるよ、まして彼の場合は凄かったんだ」
 山田は鬼頭にビールのジョッキを片手に話した。
「いつも酷くね」
「罵られてきたんですか」
「全否定の感じでね」
「ご家族にそうした人がいて」
「部活でもね」
「それで、ですか」
「人は自分を罵って否定する相手をどう思うか」
「嫌いますね」
 鬼頭もそれはと答えた。
「僕もそうなります」
「そう、それでなんだ」
「佐竹さんはですか」
「嫌いな相手にはね」
 どうしてもというのだ。
「徹底的に嫌って全否定するだ」
「そういう事情があったんですね」
「自分でもわかっているんだ」
 イカゲソを食べている鬼頭にもだ、佐竹は話した。
「自分のそうした性格はね」
「そうですか」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「自分で気付いていても中々」
「なおらないですか」
「うん、嫌いだと」
「全否定ですか」
「態度にも出てね、どうにかしたくても」
「仕方ないとは言わないけれど」
 山田はそんな佐竹に悲しそうなそして苦そうな顔で話した。
「その事情は僕も知ってるし」
「そうなんだね」
「酷かったよ、ご家族も先生も」
「それでなんだ」
「佐竹君が嫌うのも。そして」
「あの人達以外も嫌うと徹底的になることは」
「否定されてきた人は自分も否定する様になるんだね」
 山田はその顔でこうも言った。
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