敢闘編
第七十八話 予期せぬ遭遇戦
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やミューゼル少将の事をよくは思っていない様だな」
「そうではありません。それぞれの居場所を守って頂きたい、というだけです。伯爵には藩塀として宮中にて皇帝陛下に近侍なさる責任がおありでしょうし、ミューゼル少将などは姉君が宮中に居られるのですから、近衛にでも居るのがお似合いでしょう」
ヒルデスハイム伯爵は今や正式に軍に復帰し、正規軍人と同じ扱いを受けている、自らの武功を誇る事もなく軍務に精励されていると聞く。政府は認めたがらないが不利な戦況の今、度々前線で戦ってきた有力な艦隊司令官を余所者扱いするなど愚かしいにも程がある。それに、確かにミューゼル少将は成り上がりだが、成り上がり者というのはそれが可能なだけの能力を持っているからこそ成り上がる事が出来るのだ。そうでなければヒルデスハイム伯とて自分と何の縁も無い者を重用はしないだろう。宇宙艦隊の参謀を務めていたと言ってもこの程度か。いや、この程度でも務まるという事だろうか。とすれば嘆かわしいものだ…。
「敵艦隊、十二時方向。恒星ヴィーレンシュタインを背に横陣形をとりつつあります。ヴィーレンシュタインの磁場及び熱輻射の影響で詳細は不明瞭ですがおよそ六千から七千隻。我が艦隊との距離、およそ二百光秒」
「六千から七千だと!馬鹿な、発見時と規模が違うではないか!」
オペレータの抑揚のない報告に驚くシュターデンの声が、私を現実に呼び戻す。
「オペレータ、スクリーンに概略図を出せ」
ほう…恒星ヴィーレンシュタインを背にして…背水の陣という訳か。それに恒星に近づけば磁場や熱の影響で艦艇が発する熱量を誤魔化す事が出来る…。
「閣下、敵は既にあの艦隊だけではないのでは…あの小艦隊は陽動で、未発見の敵本隊が付近に潜んでいるのではないでしょうか」
…自らの野心の為に私を焚き付ける割には、芯が無さすぎるなシュターデン。けしかけたり怯えたり…忙しい事だ。
「私には眼前の敵が背水の陣を敷いている様にしか見えないのだが」
この男と戦術論を戦わせるなど愚の骨頂と言うものだが…あれは言葉通りの背水の陣なのだ。まあ、背にしているのは紅く燃える炎ではあるが…。
貴様の言う通り、ヴィーレンシュタインの影に敵本隊が潜んでいたとしよう。囮として眼前に五、六千隻。此方を足止めするには十分な数だが…となると常識的に考えて敵本隊には囮の二倍以上の兵力が存在する事になる。何故なら囮より敵本隊が数が少ないとなると、敵本隊が我々に側面攻撃を仕掛けてもその効果は限定的になってしまうからだ。そして、既に伏兵が存在すると此方に考えさせてしまっているのだから、益々伏撃の効果は薄れてしまう。となると敵兵力の合計は少なくとも我々と同程度、又はそれ以上事になる。敵の総兵力が我々と同程度だとすれば、既に眼前に存在する兵力を差し引けば潜む敵本隊は六千隻ほど
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