第五十四話 八艘跳びその八
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「あそこまで不人気なのは」
「そやろな」
中里もそうだろうと答えた。
「頼朝さん位人気がないって」
「日本の歴史やとな」
「井伊直弼さん位やな」
「どっちがより不人気かっていうとな」
「わかりにくいな」
「どっちも不人気やからな」
「そうやさかいな」
人気者にもランキングがあるがそれは不人気な者もっと言えば嫌われ者についても存在しているものなのだ。
「頼朝さんは判官さんや平家ファンに嫌われてて」
「直弼さんは志士ファンに嫌われてるな」
「特に長州系の人からな」
これは吉田松陰を処刑させたからである。
「嫌われてるな」
「そやな」
「ちなみに井伊さんは生前から嫌われてた」
死んだその日に江戸城の内外で喝采だったという。
「それで今に至るまでな」
「嫌われてるな」
「それこそ彦根以外ではな」
「嫌われてるな」
「そや、ほんま頼朝さん並にな」
そこまでというのだ。
「嫌われてるわ」
「生前からってのが凄いな」
「ああ、完璧主義で生真面目で教養があってな」
茶道や和歌、朱子学、陶芸に秀でていたという。
「居合の達人でもあったが」
「そうした長所が全部裏目に出たな」
「世に出てからな」
「そうなった人やな」
「下のモンにも厳し過ぎたしな」
「嫌な上司やったんやな」
「そやから人望もなくて」
幕府の中でだ。
「桜田門外の変で殺されてもな」
「拍手喝采やったな」
「彦根藩以外の誰もが大喜びで死んだことを嘲笑する様な川柳まで出たわ」
江戸市中でだ。
「つくづくな」
「人気のない人やってんなあの人も」
「そや、まあ人気を度外視してやることやるのも政やが」
それでもとだ、芥川は話した。
「頼朝さんや直弼さんみたいに嫌われるとな」
「その政にも支障が出るな」
「頼朝さんも暗殺説あるしな」
井伊直弼がどうなったことはもう言わなかった。
「あまり人望がないとな」
「ちゃんとした政も出来んな」
「ああ、そやからな」
「頼朝さんや直弼さんは反面教師やな」
「そうせんと思う様に政も出来んで」
例え自分が世をよくしようと思って政に挑んでもだ。
「挙句な」
「暗殺されてやな」
「お墓を長い間建ててもらえんかったりな」
頼朝の様にというのだ。
「死んでから嘲笑されるわ」
「川柳とかでやな」
「そうなるのは嫌やな」
「ああ、誰もがな」
こうした話もした、そしてだった。
神霊達が待っている階に行くとだ、源義経が笑って言ってきた。
「ああ、兄上か」
「はい、頼朝さんですが」
「神霊にはなっておられぬな」
綾乃にこう話した。
「私はこの世界では神霊で殺されていないが」
「それでもですか」
「どうもあのご気質だからな」
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