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第五十三話 幸福その十六

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「若しかしたら。けれど」
「星史郎さんがいるか」
「そう思ったけれど星ちゃんは避けるからね」
「誰かを好きになることはだな」
「なってもね」
「あの通り隠すな」
「本当は凄く優しいから」 
 星史郎の本質を話すのだった。
「だからね」
「それでだな」
「うん、それでね」
 北都はさらに話した、神威と向かい合いつつ上機嫌なままである、そのうえで話をしていくのだった。
「殺したくないから」
「本当は殺したくなかったな」
「私も昴流ちゃんもね」
「そうだったな」
「うん、だから私星ちゃんも好きで」
「その好きがだな」
「昴流ちゃんに対するものと違ったけれど」 
 今そのことを告白するのだった。
「けれどね」
「それでもだな」
「星ちゃんは応えなかったわ」
「北都さんを好きでもな」
「隠してね」
「ああなっていたか」
「私が自分に術をかけていなかったら」
 あの殺された時にというのだ。
「殺されていたわ」
「そうだったな」
「だからね」
「俺に会っていればか」
「よかったかもね」
「十年前に会っていれば」
 自分達がとだ、神威は言った。
「どうだったか」
「同じ様な年齢だと」
「その時はな」
「絶対だったかもね」
 笑顔での返事だった。
「コクっていたかも」
「そうだったか」
「それも断られてもね」
「何度もか」
「きっと諦めないから」 
 その時はというのだ。
「そうしていたかもね」
「そうだったか」
「そう思うと今出会えてよかったかも」
「よかったのか」
「うん、だって夢中になり過ぎて」 
 神威、彼にというのだ。
「昴流ちゃんと星ちゃんのこと忘れるかもだし」
「そこまでか」
「私にとって二人は絶対なのに」
 そこまでの存在だがというのだ。
「けれどね」
「それでもか」
「二人のことを忘れるなんて」
 それはというのだ。
「嫌だからね」
「それでか」
「そうならなくてよかったかも」 
 こう言うのだった。
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