第一章
10.ロンダルキアの青空
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だった。
そして前方へと、放出――。
「う――」
激しい光の放射に飲み込まれる、ローレシア王。
放射の後ろにいるはずのフォルも、全身を焦がされる感覚だった。ロンダルキアのすべての雪が融けるのではないか。そう思うほどの強い熱が放たれているに違いないと思った。
今起きている現象の機序などは一切わからないが、お守りが自分を救おうとしてくれている。
贈り主に感謝しながら、フォルはこの機を逃すまいと、杖の先をロスへと向けた。
「ギラ!」
青い光に絡みつくように飛んだ大きな炎が、すでに光に飲まれていたロスの全身を包む。
「ぐ……う、あぁっ――」
耐えていた彼が、ついに何歩も後ろへと押し戻された。
だが、そこまでだった。
片足を引いた前傾姿勢で踏みとどまると、彼は大きな咆哮をあげた。
それはフォルの一縷の望みを絶つような、今までどの生き物からも聞いたことがないような大きな叫びだった。
やがて、青い光がとまる。
「……過去の旅で……何度も危機はあった……」
全身から煙をあげながら、ふたたび踏み込んできた。
「そしてそのすべてを力で打ち破ってきた!」
「うあっ!」
また高い金属音。
そして悲鳴とともにふたたび大きく飛ばされ、転がったフォル。
今度はすぐに立てなかった。横向きになって腕の力だけでやっと上体を持ち上げると、胸のネックレスが目に入った。
たたえていた揺らめく青い不思議な光は消え、無色透明となっている。
そして見た直後、音もなく崩れ、金属の枠から消え去った。
祠の少女がくれた、不思議なお守り。どうやら力を使い果たして消滅したようだった。
「……ぅ……」
うめき、なんとか起き上がる。
全身から煙を立ちのぼらせているローレシア王・ロスが、わずかによろけながらも近づいてきていた。
フォルもよろけながら、杖を……構えようとしたが、手の中には何もなかった。奇跡的に斬撃を受けとめたであろうそれは、どこかに飛んで行ってしまったのだ。
「これで終わりだ」
お守りの宝石もなくなった。悪魔神官ハゼリオの形見の杖も手から離れた。
彼の言うとおり、終わりなのだろうとフォルは思った。
心残りがないわけではない。
だが、仇敵と遭い、あらためて自分が今もまだ信者であるということを確信できた。
ただ単に殺されるだけでなく、二人の同志の延命と引き換えにすることもできた。
そして自分の力ではないかもしれないが、ほんの少しだけ、大神殿唯一の生き残りとして、意地を彼に示せたかもしれない。
悪魔神官ハゼリオ様も、大神官ハーゴン様も、この結果を責めないだろう。
もう見ても仕方がないのか
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