一、 此の世界の中で
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は途轍もなく窮屈な世界であり、迷惑千万なことこの上ないのである。それに、世界が私の予想通りに展開するのであれば、そんな世界はちっとも面白くなく、忽ちにして私は世界に飽きて仕舞ひ、それならば仮象と戯れてゐた方がどんなに有意義かと、世界に見向きもしないだらう。世界の魅力の一つは多様なものがごった煮の状態でありながら秩序を持って世界に呑み込まれてあっと驚く事象が起こるからである。世界は存在してゐるものに対しては何一つ見捨てはしない。どんなものでも世界に招き入れるのだ。とはいへ、世界はこれまで多くの死滅を見守ってきたのも事実だ。また、一方で、世界は密かに選別を行ってゐて、予め世界に存続できないものは世界から弾かれて世界はそれを拒絶してゐるのだらう。世界に関してはそのどれもが正しいが、しかし、事、生物に限れば、生存競争を勝ち残ったもの、適材適所で生き長らへてきたものしか、その存在を許さぬ。しかし、例えば突然変異などのやうにそのものの発生において異形であっても世界はその存在を許す。けれども、その異形のものが生き長らへるかどうか世界は厳然と選別を行ひ、それは冷徹極まりないのだ。
また、私の仮象が現実とまるで違ふことからも解る通り、仮に私の仮象と現実が寸分違はず一致するとしたならば、それは渾沌を極め、世界の道理が立たぬ。道理が立たぬ世界は既に世界の資格を失ってゐて、それが仮に存在するのであれば魑魅魍魎が跋扈する地獄絵図にも等しい”悪”ばかりが蔓延る絶望の世に違ひない。唯、そんな気がするだけのことだが、しかし、大概、直感といふものは本質を鷲?みにし、正鵠を穿ってゐるものだ。とはいへ、世界に秩序が、道理が存在することは否定できぬ。秩序があるからこそ、私は此の世界の中で予測不可能なことが同時多発的に起きながらもそれぞれに対してかうなるだらうといふ予測を立てては予定調和の中に不安を最小限に抑へながら、日常といふものを生きてゐる。平穏な日常が成り立つことは僥倖で、それが世界の慈悲ならば、此の世界は慈悲深いといふこととになるが、世界は時に牙を?き残酷極まりないのも事実である。世界は不合理である。世界は節度あると看做すことは世界を買ひかぶってゐてそれは身を滅ぼす因になり得るのだ。
だから、この美しい世界において、大人でない私は日常をそれが終始平穏無事であらうとも右往左往して過ごすことになる。此の世界が好きといひながら、私は結局の所、此の世界を心の底では信じてゐないのである。なんと矛盾してゐることか。しかし、存在はそもそも矛盾してゐるものである。矛盾してゐるからこそ、此の世界に存在を許されてゐるのだ。果たして矛盾してゐない存在は存在してゐるのだらうか。どんな存在もその内部では矛盾を抱えてゐてその矛盾を矛盾から解放しやうとして日常を生き、例えば、前日矛盾であったものが、新
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