第一章
9.楽園
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びに行ったときは、いつも『よい』の一言で許してくださいました。
私は上司として、親代わりとしてハゼリオ様を尊敬していましたが、教団の代表としてのハーゴン様も、同じように深く尊敬して――」
「もういい」
ロスはフォルの言葉をさえぎった。
「改宗しないということか?」
「しません。するわけ、ないではありませんか」
「ハーゴンは討伐され、破壊神も討伐された以上、もしも君にとっての理想があったとしても、それは今後決して実現することはないだろう。それがわからないというのは理解に苦しむ」
「理想が実現しない? 私にとっての理想は、すでにこのロンダルキアの地にありました。大神殿では、私たち人間も、人間以外の種族も、ドラゴンなどの動物も、そしてベリアル様・バズズ様・アトラス様など異世界から来てくださったかたがたも同居し、皆さんで仲良く毎日を過ごしていました。
人間しかいないあなたがたの城。多くの生き物が住み、出入りをしていた私たちの大神殿。どちらがこの世界の楽園だったのか。私は大神殿で一番下っ端の魔術師でしたが、その答えを間違えることはありません」
「……改宗しないならば、ここで俺と戦わなければならない」
つまり“死”を意味する。
それを伝えるように、ロスが剣を構え直した。
「望むところです」
フォルも、下がっていた杖先を彼に向けた。
魔術師フォルの仮面と、ローレシア王・ロスの青味がかった瞳が、交錯する。
わずかな時が過ぎると、ロスは白い息を小さく吐いた。
「やはり時間の無駄だったか」
その言葉に怒気はない。
「一瞬で終わる。長く苦しむことはないだろうから安心してほしい」
しかしその表情や剣の輝きには、哀れみにも似た感情が乗っているようだった。
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