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博士の挑戦状
第百十二話

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                 第百十二話  多数の意見
 博士は言った。
「一人のおかしな意見よりもじゃ」
「皆だね」
「皆の常識が採用されるべきだね」
「例えばわしが匿名で何か言う」
 博士はまたタロとライゾウに話した。
「それが通ればどうなる」
「博士の主張ってね」
「無茶苦茶だからな」
 二匹は博士がマッドサイエンティストであることから話した、このことはもう絶対のことであり揺るぎはしない。
「狂気の破壊神だからな」
「そんな神様の意見なんてね」
「通ったらな」
「大変だよ」
「除夜の鐘が五月蠅いから鳴らすな」
 博士はこうも言った。
「一人が言ってじゃ」
「鳴らさなくなる」
「大晦日にか」
「こんなことがまかり通るとな」  
 そうなると、というのだ。
「愉快犯が悪意を以てじゃ」
「好き勝手言ってね」
「世の中滅茶苦茶になるな」
「動物園のことも然りじゃ」 
 当然水族館もそこに入る。
「少数派それも間違いなく極めてな」
「言うなら暴論だね」
「そんなのが通ったらな」
「文明も成り立たぬ、わしは文明を愛しておる」
 これも博士の揺るがない考えである。
「こんなことが通れば文明が停滞するわ」
「だからだね」
「博士としてはだな」
「どう考えてもおかしな意見は聞くなじゃ」
「少数のね」
「何でも聞いたら駄目ってことだね」
「一人手を挙げて通ってはならん」
 絶対にというのだ。
「まともな池が通る」
「そうでなくてはね」
「駄目だよな」
「そうじゃ、わしは民主主義に興味はないが」
「文明に影響ある」
「そんなのは駄目だな」
「そういうことじゃ」
 こう言うのだった、そしてだった。 
 博士は動物園の生きもの達をさらに見ていった、そうしてそうした暴論のことは二匹そして小田切君と共に覚えていくのだった。


第百十二話   完


                2023・11・3
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