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第五十三話 幸福その二

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「ですから」
「思い残すことはありませんか」
「そうです、前を向いて生きて」
 昴流に再び優しい笑顔を向けた、そのうえでの言葉だった。
「幸せになって下さい」
「そうなるべきですか」
「昴流君も他の皆さんも」
 誰もがというのだ。
「絶対に」
「そうですか」
「僕が言うことはそうです」
「皆幸せにですね」
「なって下さい」
「そうしていきます」
 これが昴流の返事だった。
「僕、そして僕達は」
「そうして下さいね」
「はい、そして」
 昴流は微笑んでこうも言った。
「姉さんと星史郎さんのことは」
「僕もですか」
「忘れないです」
「そうしてくれますか」
「絶対に」
 こう言うのだった。
「そうしますので」
「有り難うございます、では」
「これからですね」
「煉獄に行ってきます、お元気で」
「はい、星史郎さんさようなら」
「昴流君さようなら」 
 最後もにこりと笑ってだった。
 星史郎はすうっと姿を消した、昴流は微笑んで彼を見送った。そして彼の墓の前から去ったのだった。
 火煉は退院するとすぐに教会に戻った、そのうえで。
 仕事をしていたがここで神父に言われた。
「お身体は」
「何ともありません」
 にこりと笑って答えた。
「もう」
「それは何より。ただ」
「それでもですか」
「無理はしない様に」
 こう言うのだった。
「くれぐれも」
「怪我をした後なので」
「それで」
 それ故にというのだ。
「何かあれば私に」
「お話していいですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「そうしても」
「ではお願いします」
「これからもこの教会にいてくれるね」
 神父はこうも言った。
「そうだね」
「神父様がいいと言われれば」
「シスターとして」
「そうさせてもらいます」
「それなら」
 さらに言うのだった。
「自重して」
「働くことですね」
「その様に」
「それでは。そこまで言われるなら」
 火煉は微笑んで話した。
「私はこれからもです」
「この教会に」
「ずっとです」
「いてくれるんだね」
「そして神父様がよかったら」
 こうも言うのだった。
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