第一章
8.悪魔神官の杖
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」
この二人、教団の同志の生き残りであるこの二人は、生きのびさせたい。逃げてもらなければならない。そのための手法はともかく、気持ちだけはフォルの中で固まっていた。戦えば間違いなく死ぬ。だから戦わせてはならない。
だが、その気持ちが二人に届きそうにない。
「残念ながら逃がすつもりはない」
そこに追い打ちをかけるような、真正面からフォルの思考を否定せんとする言葉。
剣を構え近づこうとしてくる青い剣士の姿に、フォルは焦る。
「わ、私が戦って、足止めをします。その間に逃げてください」
それしか、思いつかなかった。
「馬鹿か。お前など時間稼ぎにならんわ」
「それでも私が戦います。二人とも逃げてください」
「お前に指図されるいわれはない!」
「お願いします! もう同志がバタバタ死んでいくのは嫌なんです!」
どうする。
また頭の中に祠の白い少女の声が響く。
逃げようとしてくれないアークデーモンの大きな体。
その背後には、作った墓が並んでいる墓地。
さらに向こうには、小さな崖と、ロンダルキアを流れる川。
奥まで行ったフォルの視線が手前に戻る。
その途中で、一つの墓に目が留まった。一番先に作った、悪魔神官ハゼリオの墓だ。
……。
悪魔神官ハゼリオ様、なら?
思考がそこにたどり着いた。
フォルは杖を強く握った。
――そうだ。あのおかたなら、きっとこうする。そして自分はそうされて生き延びた。
フォルは祈った。
悪魔神官ハゼリオ様、そして大神官ハーゴン様。この非力な部下に、力を――。
細い腕で、力の限り、杖を強く握った。
「あなたがたは! 生きてください!!」
思いっきり叫び、杖の頭の側でアークデーモンを突いた。
フォルの腕力では本来びくともしないはずの巨体。
しかし杖についた二つの宝玉が激しく光る。
「うぉっ!?」
ただならぬ雰囲気に驚きの声を出すアークデーモン。
「おおぉッ――!!」
巨体が吹き飛び、勢いよく墓の向こうへと飛んでいく。
まるで杖から突風が吹いたような飛び方だった。
フォルはアークデーモンの着水音を聞く前に、バーサーカーの少女にも杖を向けた。
「ああぁッ――!!」
バーサーカーの大きな声も、急速に遠のいていった。
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