第七百三十四話 猛獣以上の災厄その八
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「しかしな」
「自ら率いられないことは」
「問題だった」
「そういえば何とかです」
上等兵は言った。
「軍を率いようとして」
「そしてだな」
「実際に率いた皇帝がいましたね」
「ネロの前の皇帝だな」
大尉はすぐに答えた。
「クラウディウスだ」
「優秀な学者でしたね」
「だが軍務に就いたことはなくだ」
それでというのだ。
「その経験が乏しくだ」
「それをわかっていたので」
「軍を率いてな」
「勝利を得ましたね」
「そうだった、だがネロはどうもだ」
彼はというのだ。
「そこを忘れていたか重要視していなかったか」
「自ら軍を率いることをですね」
「せずな」
皇帝になってからもというのだ。
「それが弱点になった」
「そうだったのですね」
「だが中流階級や下層階級に重点を置いた政治を行ってだ」
「火災にも果敢に立ち向かい」
「かつ芸術も愛したな」
「善政を敷いたのですね」
「それがネロだった、今もキリスト教では悪く言われるが」
それでもというのだ。
「そこから離れるとな」
「悪い評価は受けていないですね」
「連合でもだ」
エウロパのことは兎角悪く言う国だがというのだ。
「ローマ帝国についても批判的だが」
「それでもですね」
「見るべきことは見る国だ」
連合はというのだ。
「だからだ」
「それで、ですね」
「ネロの政治はな」
「しっかりと見られていますね」
「そして評価されている」
そうだというのだ。
「この国でもな」
「そうなのですね」
「だから貴族からは嫌われていてもな」
そして彼等が多かった元老院からもだ。
「しかしな」
「民衆からは慕われていた」
「そうだった、短気なところはあってもな」
「全体として見てですね」
「それなりかそれなり以上の政治家でだ」
「皇帝でしたね」
「そうだった、暴君ではなかった」
このことは事実だというのだ。
「暴君はもっと違う」
「サハラによく出たタイプですね」
「そうだ、贅を極め暴政を行いだ」
そうしてというのだ。
「民を苦しめる」
「独裁者でも多いですね」
「そうした連中だ」
「ネロは全く違っていた」
「そうだった、そして暴君や悪辣な独裁者はだ」
こうした連中はというと。
「何よりも大きな災厄だ」
「そうなりますね」
「連合ではもう滅んだが」
それでもとだ、大尉は話した。
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