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博士の挑戦状
第百十一話

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              第百十一話  生きられるなら
 ふと博士は動物園の中でこう言った。
「よいのう」
「博士って動物園とか好きだからね」
「博物館とか行くのな」
 タロとライゾウが応えた。
「好きだからな」
「機嫌がいいね」
「昔ルドルフ二世の宮殿にも行ったことがある」
 神聖ローマ帝国皇帝であり様々な珍品や珍獣を集め異形の学問に夢中になったこの皇帝のというのだ。
「そこでドードー鳥も見た」
「ああ、あの絶滅した」
「丸々太った鳩か」
「こうして生きものを入れてな」 
 動物園にというのだ。
「種として保護して研究することもな」
「いいことだね」
「種の保存ってやつだな」
「左様、そうしたことも必要じゃ」
 博士は二匹に話した。
「最近動物園や水族館に反対する者もおるが」
「あれだね、動物虐待とか言って」
「生きものを檻に入れるなとかな」
「そう言ってね」
「自然のままでいさせろっていうんだね」
「ショーでは虐待の可能性もあるが」
 それでもとだ、博士は話した。
「しかしな」
「普通に飼育しているとね」
「博士の言う通りだよな」
「左様、種の保護と学問の為によい」
 動物園や水族館はというのだ。
「植物なら植物園じゃな」
「そういうのはいいんだね」
「じゃあ反対する奴は間違ってるか」
「そうじゃ、しかもな」
「しかも?」
「しかもっていうと何だよ」
「今の世の中おかしな意見が通る」
 そうなっているというのだ。
「公園で子供が遊ぶ声が五月蠅いだの言ってな」
「公園が閉鎖されたりね」
「そうなるよな」
「おかしな奴が一人言ってな」
 そうしてというのだ。
「通るからな」
「そうした意見もだね」
「通るんだな」
「これも間違っておる」
 博士は眉を顰めさせた、そのうえで言うのだった。


第百十一話   完


               2023・11・3
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