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球速が出なくなっても
第二章

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「かなり違うからな」
「それで、ですか」
「そこに変化球も入れたら」
「俺は得意じゃないですが」
「得意じゃなくてもな」
 そうであってもというのだ。
「あるだけで違うからな」
「変化球も交えてですね」
「投げていけばいいぞ」
「じゃあやってみます」
「長く現役でやろうと思ったら」
 そう願うならというのだ。
「ずっと球威のある速球じゃいられないからな」
「年齢で衰えますね」
「今のお前みたいにな、だからな」
「これからはですね」
「そうして投げろ、いいな」
「わかりました」
 コーチの言葉に頷いた、そうしてだった。
 実際に相手の癖や考えを見てストライクゾーンの隅を衝いて投げる様にした、すると成績が戻ってだった。
 彼はストッパーのままでいられた、それで家族に話した。
「これからもストッパーでな」
「頑張るのね」
「ああ、ただフリーエージェントがな」
 これがというのだ。
「そろそろな」
「十年目だから」
「メジャーもな」
 こちらもというのだ。
「噂されているけれどな」
「どうするの?それは」
「いいよ、どっちも」 
 フリーエージェントもメジャーもというのだ。
「今のチームに愛着あるし不満もないしな」
「だからなのね」 
「それにな」
 自宅で妻に共に食事を摂りつつ笑顔で話した。
「皆と一緒にいたしな」
「残留ね」
「ああ、そしてこれからもな」
「投げていくのね」
「トレードにもならないと」
 その限りはというのだ。
「ずっとな」
「投げていくのね」
「そしてな」
 そのうえでとだ、妻にさらに話した。
「とことんな」
「投げていきますか」
「ああ、そうしていくよ」
「じゃあ家族としてね」
「助けてくれるか」
「そうしていくわね」
 夫に笑顔で話した、そして子供達も言ってきた。
「お父さん頑張ってね」
「これかもね」
「ああ、お父さんは頑張るぞ」
 子供達にも笑顔で応えてだった。
 近藤はストレートを主体に投げていった、このことは若い頃と変わらなかった。コースを衝いてそのうえで相手を読んで投げていってだった。
 長い現役生活を過ごした、そして引退後はその経験を活かして解説者やコーチとして活躍した。そのうえで家族と幸せに過ごしていった。


球速が出なくなっても   完


                  2024・1・20
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