最終話 素敵な想い出その十
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「花っていいます」
「花ちゃんか、宜しくね」
「宜しくお願いします」
花も笑顔で応えた。
「これから」
「こっちもな、礼儀正しいな」
「ちゃんと教えてますから」
咲はまたマスターに話した。
「ですかね」
「そうなんだな」
「それじゃあ今日は紅茶頂きます」
結婚してからも渋谷に来れば寄っているこの店のマスターに対して高校時代から変わらない笑顔で話した。
「席は二人用で」
「そっちに座ってか」
「娘はアイスミルクとクレープ、バナナとアイスを」
「その二つだね」
「この娘熱いの苦手ですから」
それでというのだ。
「そっちを」
「するんだな」
「ええ、それで」
そのうえでというのだ。
「宜しくお願いします」
「それじゃあな」
マスターも笑顔で応えてだった。
娘と一緒に席に着いた咲に紅茶を出してだった。
花にはアイスミルクとクレープを出した、娘はまずはクレープをフォークとナイフを結構慣れた感じで操りつつ食べて言った。
「美味しい」
「気に入ったのね」
「うん、美味しいね」
「そうね、ただお母さんはね」
母は娘にくすりと笑って話した。
「ここでは紅茶かコーヒーを飲んでるから」
「クレープ食べないの?」
「そうなのよ」
「そうなの」
「飲むだけで充分だから」
それでというのだ。
「これだけでね」
「いいの」
「そうよ」
こう言うのだった。
「別にね」
「そうなの」
「ええ、花ちゃんは食べてね」
「うん、けれど甘いものを食べたら」
花は母に純粋な笑顔と声で応えた。
「ちゃんとね」
「そう、歯を磨いてね」
「そうしないとね」
「虫歯になるから」
だからだというのだ。
「ちゃんとね」
「磨くね」
「寝る前はね」
咲は優しい声で応じた、そうしながら言った通りにちゃんと磨く花の素直さに喜びかつ育て方が正しいとも感じ嬉しく思った、そうして喫茶店で楽しい時間を過ごし。
喫茶店を出た、その時にマスターに言われた。
「またな」
「はい、お邪魔します」
「いつもは一人だからな」
「娘が一緒だとですね」
「新鮮だったよ、それじゃあまたな」
「この娘も連れてきます」
「そうしてくれよ」
こうした話もした、そしてだった。
店を出て駅に戻ることにした、そこから先の実家に戻るつもりだった。だが。
109のビルの前で速水と会った、それで声をかけられた。
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