第六章 贖罪の炎赤石
第一話 覚悟
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さん……あなたを信じているからです』……シエスタの言葉が脳裏に繰り返される。
信じる……か……。
ルイズを戦場に行かせないのは、ルイズを心配してのことか? それとも俺がルイズを信じていないからなのか……。
「俺は……どうすればいいんだ」
思い出すのは一人の女性。
戦場に生まれ、戦場と共に生き、そして戦場に散った人。
生まれながらにして少年兵として戦場を渡り歩き、戦場の辛苦を全てを受けた人……。
「……信じたからこそ……あなたを死なせてしまった…………」
思考がぐるぐると落ちていく。
自己嫌悪に吐きそうになり、気分転換に外に出ようとすると、
「シロウさん……起きていますか?」
「……シエスタか。どうした、何かあったか?」
ノックと共にシエスタが現れた。
おずおずと入ってきたシエスタだが、士郎の顔色に気付くと慌てて駆け寄っていく。
「どうしたんですかシロウさん! 顔色がものすごく悪いですよ! まるで病人……ハッ! もしかして病気ですか? 大変っ! 早く寝て下さい!」
「落ち着けシエスタ……俺は大丈夫だ」
「でも……顔色が……」
「……少し昔を思い出していただけだ」
「そう……ですか」
黒い肌が白く見えるほど血の気が引いた士郎の顔色に、驚き慌てていたシエスタだったが、士郎に頭を撫でられ落ち着きを取り戻す。悲しげな色を漂わせる瞳を細め見下ろしてくる士郎に、小さくこくんと頷きを返すシエスタ。
「昔のことって……何を……ですか」
「……俺が……救えなかった人のことだ」
「救え……なかった?」
今にも消えてしまいそうなほどか細い声を漏らす士郎を、支えるようにシエスタが寄り添う。
「……ああ……もう、十年近く前になるな」
「……ごめんなさい」
「何がだ?」
唐突に謝ってきたシエスタに、士郎が訝しげな顔を向ける。
シエスタは顔を上げず、士郎の外套を掴む手にぎゅっと力を込めた。
「わたしが、馬鹿なこと言ったからですよね……」
「……シエスタが言うことも正し――」
「でもっ! それがシロウさんを苦しませ――あ……」
「いいんだ」
バッと顔を上げ涙を流しながら誤ってくるシエスタを、士郎は抱きしめることで止めた。小さく震え続けるシエスタの背中をぽんぽんと、親が泣く子供をあやすように叩く。
「……俺は……大丈夫だから……」
鉢植えが所狭しと並べられ、天井からは鳥籠がいくつもぶら下がり、鉢植えを避けるように子犬や子猫が駆け回る。それが、カトレアの部屋だった。
そんな子犬たちが駆け回る部屋の中、部屋の中央に置かれた天蓋付きのベッドの上で、ルイズはカトレアに髪をすかれていた。
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