第六章 贖罪の炎赤石
第一話 覚悟
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「……それで救える命があると信じて……シロウは戦うんだ……一人で……だから……だからわたしが」
そこまで言い、ルイズはカトレアに顔を向けることなくベッドから下りると、振り返らずにドアに向かって歩き始めた。
「ルイズ、何処に」
「……シロウのところ」
カトレアの問いに短く答えたルイズ。
立ち止まったルイズは、顔をカトレアに向けない。
「ありがとう、ちいねえさま。話したら色々すっきりしたわ。……あの、ね。実は今、シロウと喧嘩してて……どうしようと思ってたんだけど、ちいねえさまに話して覚悟を決めたわ」
「覚悟?」
「どんな手を使ってもシロウについていくって。だから、ちょっと行ってきます」
返事を聞くことなく、ルイズはカトレアの部屋から出て行く。
音を立てて締まるドア。
一人残されたカトレアは、ルイズのぬくもりがまだ消えていない膝に視線を落とす。そこには、濡れた跡が見える。そっとその跡を手でなぞったカトレアは、旅籠で士郎を初めて見た時のことを思い出す。
「……優しくて……暖かい人」
時々、不思議な感覚にとらわれる時がある。
「……救える命があると信じ、戦場で戦う……」
動物の心や気持ちがわかることが時々あるのだ。
それは時に人のものも……。
ハッキリとしたものではなく、あやふやなものだが、確かに感じ取れることが。
時にそれは、ハッキリと感じ取れる時がある。
今日がそれだ。
「冷たく……乾いた」
初めて彼を目にした時感じたのは、身を切り裂く様な鋭利な冷たさと、干からびた荒野のような乾いた心。
「暖かく……穏やかな」
しかし、それと同時に正反対の毛布で包まれるような柔らかく暖かな心も感じ取れた。
矛盾するものが、混じり合い、溶け合い、一つとなって存在する。
カトレアは今までそんなものを感じたことはなかった。
だが、分けてみれば似たようなものを感じたことはあった。
それは……。
「虐待され……死んでしまった子犬」
随分と昔、領地の村の隅で見つけた子犬。見つけた時には既に手の施しようがなく、それでもと伸ばした手を噛み付かれた。噛み付かれた瞬間、その子犬の心を感じた。生まれてすぐに猟犬に使えないと捨てられ、近所の子供や大人に笑いながら石を投げられ虐待される毎日。遂には何も感じなくなり、身体よりも先に心が干からひび割れてしまった。
そして……。
「子を守り……死んだ狼」
森の中を散歩していると、道を遮るように現れた狼。矢が身体に突き刺さり、一目見て手遅れだとわかった。狼は恐ることなくカトレアに近づくと、口に咥えた子狼を足元に置いた。眠る子狼を人舐めすると、その狼は子狼を抱きしめるように倒れ。その身体を
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