第六章 贖罪の炎赤石
第一話 覚悟
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「シロウさん」
「……」
「シロウさん」
「…………」
「……シロウさん」
「………………」
「はぁ……シロウさん、いい加減ミス・ヴァリエールと仲直りしてください」
「……別に喧嘩をしているわ――」
「まったく。子供じゃないんですから」
「…………」
ゴトゴトと揺れる馬車の中、三人も座れない小さな座席の上、シエスタは隣りに座る士郎を見上げ肩を落としている。隣に座る士郎はそんなシエスタの様子に気付きもせず、ぼうっと外を眺めていた。
馬車の中のシエスタは、何時ものメイド服姿ではなかった。草色の可愛らしいワンピースに編み上げのブーツを履き、頭の上には小さな麦わら帽を被っている。
そんな気合が入った清楚で可愛い姿になっているシエスタは、何時もならば胸の一つや二つ押し付けながら逃げ場のない士郎の首元に吸い付いているはずだというのに、狭い座席の上、士郎と肩を寄せ合って何故か浮かない顔をしていた。
理由はある。
それは自分の恋敵でもあり、身分を超えた友達でもあり、そしてある意味戦友でもある人。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと士郎が珍しく喧嘩をしているからだ。ただの恋敵ならこのチャンスを逃さずに色々出来たのだけど、残念な? ことにシエスタとルイズは仲間だから。
はぁ……放っておけませんよね。
まったく。一体原因は何なんですか?
う〜ん原因原因……え〜と……
夏休みから帰ってきた時は変じゃなかったですよね。
じゃあ、夏休みから帰ってきてからのことが原因?
あっ! もしかしたらミス・ヴァリエールを誘わずミス・ロングビルと一緒にシロウさんを襲ったこと! ……いやいや違う違う、だって次の日バレて、シロウさんを窓から蹴落としてその話は終わりになったし。
じゃあ、どっちがシロウさんを悦ばせられるか勝負して、何時も負けてること?
確かにそれが原因で喧嘩してたこともあったけど……でも、こんな風じゃなかった。
え〜と、え〜と……本当にわからない……
一体何が理由なんですか?
二人共教えてくれないし……もう……原因がわからないと解決できませんよ。
ねぇ、ミス・ヴァリエール……。
さて、シエスタが何やら喧嘩している士郎とルイズを仲直りさせようとしている馬車の後ろには、さらに立派な一回り大きい、馬車を引く馬も二頭もいて、見るからに高そうなブルームスタイルの馬車が走っていた。中も立派な作りで、三人どころか五人も楽に座れるクッションが効いた座席が設置されている。そんな馬車の中、座席の上に体操座りし、足の間に顔を挟むルイズの姿があった。
「……」
「――いてるのっ!」
「………………」
「――てるのっ! 聞いてるのルイズッ!!」
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