第9話
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カノンは、アバンからとある2冊の本を分捕る。
「嫌だね。これだから頭の良い子は……こんなに山ほどある中から、別格に危険な物ばかり選ぶもんだよ」
「すみませんカノンさん。でも、可能性の1つとしてはアリだと思います。もし、魔王が本当に倒せない相手だった場合―――」
「だから凍れる時間の秘法かい?まず成功するまい。しくじれば、アンタの命も危ういよ」
だが、アバンの意思は固かった。
「御言葉ですが、私の命だけで済むなら、賭ける価値はある……とも言えます」
アバンの意志の固さに父バルゴートの事を思い出すカノン。
「解ったよ。そっちの本は持っておいき。半端にかじって実践されるよりはマシだよ。だが……」
もう1冊の黒い本は没収となった。
「こっちの本は読むのをお止め」
が、マトリフと過去を語り合った結果、やはりさっきの黒い本を―――
「アバンがそれを?マジかよ!選びに選んで、よりによってそいつだと!?」
マトリフにとっては、例の黒い本に書かれている修業をするくらいなら、ハドラーちゃんやガンガディアと戦った方がマシであった。
「珍しく気が合ったね。あんた、さっきのアタシと同じ顔したよ」
カノンは意を決して、アバンをギュータ最下層に連れて往く。
「こいつがギュータ最深部に続く禁断の場所……逢魔窟だ!」
カノンが逢魔窟の入口を開けた途端、ロカもレイラもその危険性にドン引きする。
「ううっ!」
「なんなの……この、心の底から震える感じ……」
「この洞窟に充満している邪悪な瘴気……みてぇなもんのせいだ」
「父様がこのギュータを修行の地に選んだのは、武力・魔力が向上し易いこの地の性質を見込んだからだった。その根源はこの洞窟に有った。この山は、天地魔界全てからの負のエネルギーが流れ込み、隆起して生まれた物だったのさ」
これだけでも逢魔窟の恐ろしさが十分伝わるのだが、カノンの説明はここからが本番だった。
「中は一見普通の洞窟だが、渦巻く邪気が入った者の心の闇を増幅し、様々な幻覚を見る事になる。しかも、それは形が無いとは言えエネルギー体の影響、故に侵入者は攻撃を受ける!」
恐ろしく気が滅入る話であり、同時に空恐ろしい場所でもある……が、
「私が極めるべき第三の必殺剣をこう名付けました……空裂斬!」
アバン流刀殺法の剣技。心眼で敵の本体を捕らえ、光の闘気を用いて対象を切り裂く「空の技」。物理的な力技で斬る事でも形なきモノを打ち消すでもなく、目で追えず見えない邪悪なエネルギーを斬り裂く第三の必殺剣。
が、空裂斬は実体無き見えざるものを切るという抽象的な技から難解であった。
だかろこそ、アバンは空裂斬の開発に逢魔窟の力が必要だと判断したのだ。
意を決して逢魔窟に入るアバンは、ある意味予想通りの敵が目の前に現れた。
「そうか……私の心に
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