見学者
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「それじゃあ、聖杯戦争の見学をして、何が目的なの?」
「友奈。そんなこと、分かり切っているだろう」
それに対し、回答するのはフロストノヴァ。
「お前も、聖杯戦争への参加を望んでいる。だろう?」
彼女へのパピヨンの返答は、吊り上がった笑顔。
その意味を確信すると共に、ハルトと友奈はより険しい表情を浮かべた。
「パピヨン……お前……!」
「他の参加者からの情報で、すでに分かっていることもある」
ハルトの口を指でふさぎ、パピヨンは語った。
「見滝原中学の謎の空間、アマゾン、ムー大陸、見滝原ドーム崩壊、邪神イリス。これらも全て、君たち聖杯戦争の参加者の仕業なのだろう?」
「……っ!」
仕業どころの話ではない。
見滝原中学は、とある参加者が他ならぬハルトの力を悪用した結果。
アマゾンに至っては、準備期間のかなりの期間、発生源に通っていた。
ムー大陸の発生を止められなかったのは、キーアイテムを奪われたハルトたちの落ち度もあり、見滝原ドームが崩壊した時も、ハルトは現場にいた。
そして、邪神イリス。後に聞いた話をまとめれば、あのムーンキャンサーのサーヴァントの幼体期があの姿になるまで、ハルトを含めた誰かしらが討伐していれば、あの惨劇はなかっただろう。
パピヨンは伸ばした指先に、黒い蝶を生成。
「君たちが独善的な願いのために好き勝手やっているんだ。俺も、蝶勝手な願いのために、蝶好き勝手させてもらおうじゃないか」
「そんな……っ!」
「いいだろう。戦士として、相手になってやる……」
とうとう、フロストノヴァが動いた。
席を立ち、パピヨンへ真っすぐに向き合う。
「それぞれの願いをかけて」
「いいねえ。俺も近いうちに参加資格を見つけるとするよ。監督役を掴まえれば、参加できるのだろう?」
「二人ともやめて! そんな戦い、意味ないよ!」
二人の間で友奈が訴える。
だが、闘争心がみなぎる二人は意に介さない。
「意味がないかどうか、最後の一人になったときに聖杯に聞けばいい」
「そうだな。現に私たちは聖杯によってここにいる」
「待て」
だが。
二人の間を、ハルトの冷たい声が刺す。
それは、自分では思っていないほどの声色だったのだろうか。友奈のハルトへの目線は、一部恐怖さえ宿っているようにも見えた。
「いいよ。結局参加者は、誰も俺たちの話なんて聞いてくれないんだから……」
ハルトの黒い目が、内包する魔力を露わにする。すると、黒は赤となり、その瞳孔の形が大きく変化していく。
「ハルトさん……! それは……!」
その赤い眼に顔を真っ青にしたのは、その由来を知る友奈ただ一人だった。
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