見学者
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に気付いた。
友奈がゲートキーパーと触れていた部分が浅黒く腫れている。
「まさか……友奈ちゃん、それって……」
凍傷。
やはりと、ハルトはゲートキーパーとの戦闘中、彼女に触れたことを思い出す。確かに低い体温だと思ったが、それは凍傷を引き起こすほどに低いのか。
「うん、やっぱり。あなたはいい人だね」
だが、友奈は凍傷になった部分を撫でながら安心したように言った。
撫でていくたびに、ゆっくりと彼女の凍傷が治癒されていく。人間離れした回復能力に、ゲートキーパーとパピヨンの表情に少なからずの驚愕が混じる。
「あなたが言う言葉通りなら、わたしはやっつけなくちゃいけない相手でしょ? でも、心配してくれている。そんなあなただから、わたしは戦いたくない」
「……」
ゲートキーパーはじっと友奈を見つめる。
やがてゆっくりと息を吐き。
「名乗る気はない。だが……」
少し沈黙を保ったゲートキーパーは、その言葉を口にした。
「フロストノヴァ。そう呼べ」
フロストノヴァ。
名乗る気はないと言った以上、それは本名ではないのだろう。
だがそれでも、友奈を介して、彼女の心から少しは戦いの気力が削がれたような気がした。
「うーん! 美しい出会いに感謝を! そして、それを作り上げた俺も蝶イイネ☆最高☆」
「アンタがそれを言うなよ……」
これから指輪を使うたびに嫌でも連想しそうだと頭を抱える。
パピヨンは満足そうに頷き、ハルトを突き飛ばした。
「うおっ!?」
「今日はこれくらいで充分かな」
パピヨンは立ち、そのままハルトがいた席を通り抜け、テーブル席から出る。
「充分って……」
「どういうこと?」
「?」
ハルトと友奈が同時に尋ねる。
パピヨンは腰に手を当て、背中を向けながら続ける。
「聖杯戦争……中々、面白そうではないか。益々興味が湧いた」
「……興味が湧いた……」
フロストノヴァは、やはり姿勢を変えない。だが、目線だけを彼に動かしている。
「つまり、お前はまだ参加者ではないということか……」
「!」
「ええっ!?」
「That’s right……」
パピヨンは、口を大きく開いた。
「俺はそうだな……あくまで、見学者、と言ったところかな? 蝶愉快な参加者何人かから少しずつ話を集めているところだ」
「俺たちから聞きだしたのは、願いの具体例ってことか……」
「その通り! それに、サーヴァントが異世界の死者だということも今回の話ではっきりした。君の願いは分からないけど、ここまでくるともう不要なサンプルかなァ?」
「待って!」
だが、そのまま進もうとする彼の前に、友奈が立ちふさがる。
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