第3部
ムオル〜バハラタ
鋼の俊足
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問に、饒舌だった店員さんの口が止まる。
「すいません、僕も人伝てに聞いただけでそこまでは……。詳しい話が聞きたいのなら、町長に聞いてみた方が良いかと」
「確かにそうだな。仕事中なのに話し込んでしまって悪かったな」
「いえ、僕の方から声をかけてしまったので、むしろお客様に時間をとらせてしまって申し訳ありません」
店員さんは深く一礼すると、厨房へと戻っていった。
「……今の話、どう思う?」
声のトーンを低くしたユウリは、私たちに意見を求めた。すると、いち早く声をあげたのはシーラだ。
「町の東に行った、って言ってたよね。東にはあいつのアジトがあったはず」
「ああ。しかもあのとき、俺たちの目を盗んで、あいつ……カンダタは一人逃げ延びたんだ」
ここまで言って、私はやっと気づいた。
「もしかして、その殺人鬼って、カンダタかもしれないってこと?」
「お前にしては察しがいいな。とにかく、この件については俺たちにも責任の一端がある。次の被害者が出る前に、その殺人鬼とやらを突き止める必要がありそうだ」
ユウリの言葉に、 私たちはすぐさま頷いた。
「んじゃあ、これ食い終わったら、町長のところに行こうぜ。善は急げって言うしな」
「それと、 被害者の話も聞きたい。被害者の中で一番軽傷だった人に会いに行くぞ」
こうしてメタルスライムでレベルアップ作戦は一時中止し、私たちの因縁の相手かもしれない殺人鬼の真相を探るため、町長の元へと向かうことにしたのだった。
「おやおや、あなたたちはいつぞやの……! あのときは町の女性たちを助けてくださって、有難うございます」
突然の来訪にもかかわらず私たちを笑顔で迎え入れてくれた町長に、私は一瞬面食らった。
以前カンダタ一味を役人に引き渡した際、ユウリは町長にも事情を話した。しかも私の知らないところで町長から謝礼ももらったらしく、私はここに来る道中で始めてその事実を知ったのだ。
なので町長と既知の仲だったユウリは、随分と親しげに話を進めている。
「……それで噂で聞いたんだが、最近この辺りに殺人鬼が出ると言うのは本当か?」
いきなり直球で質問すると、町長の顔がサッと青くなった。
「ご存知でしたか……。ええ、ようやく人買いの盗賊団が捕まったと思ったら、今度は殺人鬼ですよ。もうこの町は呪われているとしか思えません」
「いや、もしかしたらその殺人鬼は、その盗賊団の首領かもしれないんだ。何か知っていることがあったら教えてくれ」
すると、町長の顔がパッと明るくなった。年の割に随分と感情の起伏が激しい人だ。
「なんと、まさかこの事件までもユウリさんが解決してくれるのですか!? いやはや、なんとお礼を言ったらいいか……」
「礼を言うのは殺人鬼とやらを捕まえてからだ。それと言葉だけでなく、
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