暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
壱ノ巻
毒の粉

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葉に詰まった。



どのみち、実ることのない恋…。



「さぁもういいだろう?送ってあげるから戻りなさい」



兄上に促されるまま、あたしは気の利く言葉の一つも言えずに室まで送り返された。



「兄上…」



勢いをなくしたあたしがぽそっと言う。



「ん?」



「そんなに人を好きになるって、どういうことなの?」



兄上はふと笑ってあたしの額に優しくくちびるを押しあてた。



ひやりと名残が残るのはあたしの顔が熱いせいか。



「こういうことだよ」



「やだ兄上、ふざけないでよ!」



「ゆっくりおやすみ、瑠螺蔚」



「ばか!もう」



笑いながら兄上は戻っていった。



こういうことしてるから、たまにあたしが奥さんに間違えられるんだってば!



怒ったふりをしながら、あたしは兄上の背中と月を見送った。



兄上は、月を見上げて何を思っていたのかな。



マホって巫女姫は、もうこの世にはいないのだろうか。



兄上を愛している姉上様の気持ちはどうなるんだろう…。



どうか、お月さま。あたしからもお願いします。



あんなに悲しい恋をする人がもう出ませんように。



兄上を、姉上様を、どうか幸せになれるように見守っていてあげてください。
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