第百三十二話 イベリスその十一
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「私もお家には暗くなる前にね」
「帰りたいのね」
「暗くならないうちに帰られるなら」
それならというのだ。
「帰るのよ」
「それが一番安全だから」
「それでね」
その為にというのだ。
「今からね」
「帰るのね」
「そうするわ」
「それじゃあね」
「それで帰ったら」
愛はそれからのことも話した。
「ゆっくりとね」
「どうするの?」
「雑誌読むわ」
「雑誌なの」
「昨日買ったファッション雑誌まだ読んでないの」
「だからなのね」
「帰ったらね」
それからはというのだ。
「それからはね」
「雑誌を読んで」
「お風呂入って晩ご飯も食べて」
そうしてというのだ。
「寝るわ」
「そうするのね」
「そしてまた明日ね」
さらに言うのだった。
「頑張るわ」
「学校にアルバイトに」
「そうするわ」
「頑張ってね」
咲も笑顔で言った。
「是非ね」
「それじゃあね」
「私もそうするわね」
「そうしてね、頑張っていったら」
「いいわね」
「人間案外いつも必死にやっていたら」
そうしていると、というのだ。
「不幸とかもね」
「思わないの」
「不平や不満を感じることもね」
そうしたこともというのだ。
「ないのよ」
「あっ、それに打ち込んでいて余計なことをなの」
「考えなくなるのよ、死ぬ気でやっていて嫉妬を感じた人なんて」
「いないわよね、手塚治虫さんは特別ね」
二日三日連続の徹夜がざらという生活をしていても他の人気のある漫画家に嫉妬することもあったという。
「凄い嫉妬したっていうけれど」
「むしろあれだけ描いて質素するって」
「凄いわよね」
「普通はね」
それこそというのだ。
「必死でやっていたらね」
「不幸を感じなくて」
「それでよ」
そのうえでというのだ。
「不平も不満もね」
「ないのね」
「そうよ、そうしたものはね」
「一生懸命やっていたら感じない」
「不平不満ばかりの人見たらいいわ」
そうした者をというのだ。
「本当にね」
「努力していないのね」
「それでね」
そのうえでというのだ。
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