使徒大戦
第一章
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小揺るぎもしない。シンジの言葉は彼の心を毛筋ほども乱すことができなかったのだろうか。
「君のことは好きだよ、とても。友達だと言ってくれるのも感謝の極みさ。……でもね」
カヲルの口に張り付いた笑みが濃くなる。しかし、その眼はちっとも笑っていないことを──いや、これまで一度たりとも笑っていなかったことを遅まきながらシンジは気づかされた。
何か──何か決定的なものが欠落している、そんな微笑。
「でもね、知ってるだろう。使徒と人間は共存できないのさ。どんなに愛しくてもね。どちらかが淘汰<とうた>されなくてはならない。同じ場所に存在できない。愛しくても近づけば傷つけずにはいられないヤマアラシのように」
「そんな……」
シンジは息をのんだ。
「まさか……まさかカヲル君が、使徒だったなんて……!」
「……何を言ってるんだい」
カヲルはごくさりげなく、無造作に──
「使徒はボクじゃなく、君のほうだろうに」
──銃爪<トリガー>を引く。
「!」
ケージの静寂を揺るがし、U.S.M9からFMJの9ミリ・パラベラム弾が放たれた。けして小さくはないはずの反動を完璧にうち消し、カヲルは装填された全弾を叩き込む。
350m/sの初速を持つ、銅でくるまれた鉛の弾丸は、中学生男子の肢体など易々と引き裂くだけの力を有しているはずだった。
だが、その当前のはずの結果は生じなかった。
ただ、ひしゃげた不格好な硬貨に似た一六発の金属片が、シンジの足下に転がっただけだった。
「……綺麗だよ、シンジ君。君の心のカタチ」
シンジは無駄な抵抗と知りつつとっさに頭を庇った腕を、恐る恐る解いた。
目の前に淡く発光する深紅の六角形<ヘキサグラム>。
「……AT……フィールド?」
「人間にATフィールドがはれるかい? もちろんボクにもできはしない」
──……少なくとも今はね。とカヲルは口の中だけで小さく呟いて。
「それなのに、なんでキミにはできるんだろうね? シンジくん?」
カヲルの主張を補強するかのように、タイミングよくインカムに通信が入った。パターン青!本部内です!その切迫した青葉の声は、シンジの頭を絶望に白く染めた。
「う……うそだぁぁぁぁっ!」
その声は、あまりにもうつろに響いた。
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